突哨山と身近な自然を考える会(出羽寛代表)の会報『突哨山通信 第四十四号』の準備をしている。会は毎年、カタクリやエゾエンゴサクの開花時期に「野の花のお花見」と銘打って、「カタクリフォーラム」なる集いを企画・開催している。

 比布町との境界に広がる雑木林の丘陵地・突哨山にゴルフ場造成の話が持ち上がったのは、バブル経済の末期、一九九〇年のことだ。身近な自然を守ろうと市民運動が始まり、署名活動など地道な運動を展開した。バブル経済の破綻と同時に開発業者は倒産。二〇〇〇年に旭川市と比布町が一帯の土地を買い取り、公有地化が実現、自然公園となった。

 以来、三十三年、メンバーの高齢化に伴い講演会やパーティーなどは開かれなくなって、ずい分簡素になったが、早春の野の花が咲き誇る雑木林の中の散策路をめぐる「野歩き」を中心としたカタクリフォーラムは続いている。

 考える会は、代表と事務局長がいるだけで会費も会則もない、いわゆる任意団体だ。春の花の時期に会報を出して、フォーラムへの参加を呼びかけ、ついでに寄付を募る。その編集を手伝っているのだが、届いた記事原稿の中に、小紙も関わる面白いエピソードを見つけた。不思議な縁ってあるものだ。紹介しよう。

 中心メンバーの一人、岡本賢二さん(93)は昨年のカタクリフォーラムに、東京の女性二人を招待していた。岡本さんは、建設関連の会社の元経営者。運動の当初からともに活動して来た。林内に侵入し始めた帰化植物・オオハンゴンソウを駆除する作業を一手に引き受け、会が所有する広場にトイレや東屋を建設する仕事に精を出した。そんな“頼れる先輩”は一九九九年、ピースボートに乗船して世界を旅した。その旅で知り合った二人の女性をカタクリフォーラム開催のタイミングに合わせて昨春、旭川に招いたというわけだ。

 昨年のフォーラム開催の前日、五月三日、岡本さんは心臓の異常で入院、ペースメーカーを装着する手術を受ける事態になった。そんな状況をつゆ知らない出羽代表(79)のところに、見知らぬ女性二人から電話が入った。後から分かるのだが、二人は岡本さんが自分で建てた当麻の山小屋に三泊し、岡本さんが手打ちするソバをご馳走になる予定だったという。旭山動物園、三浦綾子記念文学館、突哨山を巡る…予定はすべてキャンセルとなり、途方に暮れる二人。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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