今春、「私立」から「市立」になって開学した旭川市立大学に二〇二六年に新設される学部・学科の名称が突然、変更された。市民が求めた「ものづくり系」でも、「デザイン系」でもない「地域創造学部」なる学部名を冠する学部になるという。

 これまでの十年以上に及ぶ、旭川市と、市が設置した有識者会議、市民グループ「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会(略称・ものづくり大学市民の会)」の三者による話し合いで導き出した「地域創造デザイン学部」は抹消され、「ものづくりデザイン学科」「地域創造デザイン学科」の二学科制のカリキュラムも否定され、「まちづくりプランナー」「アントレプレナー」の二つのコースが誕生するのだそうだ。

 二〇一二年十一月に四万三千筆の署名簿を市と市議会に提出して市立大学の設立運動をリードした、ものづくり大学市民の会から、「そんなこと、いつ、誰が決めた? 私たち市民が求めた大学・学部ではない。撤回せよ」の声が沸き起こった。当然のことである。

 この場面で、「これは大学の自治の問題だ。だから、旭川市も市議会も口は出せない」と物知り顔で解説するモノがいる。「大学の自治」って、意味が違うんじゃないか? 私たちは、日本国憲法が保障している「学問研究の自由」以前の話をしているのよ。旭川市立大学が誕生することになった経緯・歴史の次元の話を。そこに両足を据えなければ、この問題の本質は見えないし、語り合えない、議論にならない。

 市議会議員の大半が、この学部名変更を知ったのは、六月十日の北海道新聞の報道でだった。開会中の議会には、新学部の校舎(三階建て、延床面積三千五百四十平方㍍、建設費約十九億円)の基本設計の予算として補助金二千八百万円が提案される予定だった。大学側は、その根回しとして自民党系市議らに、新学部の名称変更と開設時期の一年延期について説明し、その情報が北海道新聞に漏れた。あわてた大学側は、野党議員にも説明をして回った、ということのようだ。

 市議会もナメられたものだ。二〇一二年の署名簿の提出を受けてからと勘定しても、十一年もの間、ああでもない、こうでもないと議論し、「旭川大学をベースとした公立大学を設置し、ものづくり系学部を新設する」ことについての調査特別委員会まで設置して二十四回も会議を開催し、市長を引っ張り出して質疑したりして、二〇年の大学設置準備にかかわる予算には、付帯決議まで付けて、それこそ大騒ぎして「地域創造デザイン学部」に「ものづくりデザイン学科」と「地域創造デザイン学科」を置く、と結論を出したんだぜ。その時間と労力を考えたら、「大学の自治」などというカッコいい言葉を持ち出すなんて、アホだ。旭川市のHPにも掲載されているから、良く読んでみやがれ。「旭川大学をベースとした公立大学の設置に係る付帯決議を踏まえた決議について」(令和二年十月・旭川市総合政策部)の「まとめ」の一節には次のようにある。

(工藤 稔)

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