土いじりを始めたころ、農業者の友人に「野菜の苗を植えるのは、絶対に招魂祭が終わってから」と助言された。温暖化が進んでいるから護国神社祭まで待たなくてもいいんじゃないか、と思いつつ、プロに敬意を表して守っている。空模様を眺めながら、やっと八日に定植した。家人が、「トマト、早く食べたいね」と待ちわびる。谷口農場から譲ってもらった有機栽培の苗が、今年もきっと美味い実をたくさん食べさせてくれるだろう。短い夏が始まった。あと何年、畑を耕せるか。精一杯楽しもう。枕はここまで。

 旭川ゆかりの詩人、小熊秀雄の名を冠した全国公募の第五十八回小熊秀雄賞は、四月に開いた最終選考会で四人の選考委員の激しい論議の結果、残念ながら「該当作ナシ」となった。事務局を預かる身としては言いたいことは諸々あるが、愚痴になるからやめる。

 予定していた贈呈式に代わり、記念講演の講師も手配済みだったから、「小熊秀雄賞記念フォーラム」なる集いをでっち上げて、開催した。その記念講演が、秀逸だった。講師は、昨年の第五十七回小熊秀雄賞を受賞した姜湖宙(カン・ホジュ)さん。略歴を紹介すると。

 「一九九六年、韓国・ソウル生まれ。二〇〇三年、母親と妹と共に渡日。日本とソウルとを行き来しながら、東京で育つ。十七歳の時に、母親の仕事の都合でベルリンに移住。一年後、ドイツの高校を中退し、京都の大学に進学。十九歳で結婚し、大学を中退。二十歳で出産。二〇二二年秋頃から詩を書き始め、『湖へ』は四カ月で書き上げた第一詩集。アルバイトのかたわら、翻訳業を営む。韓国籍で、京都市在住」

 私が講演の「核心」と感じた部分を引用する。

 ――(前略)日本文学が好きだった母は、私と妹を産んでから一大決心をして東大の大学院を受験し、そして無事合格しました。(工藤稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください)

(工藤 稔)

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