高砂台3・TEL61-5154

 創業八十三年を迎える老舗旅館の中にある人気そば店。現在地に移転して五十四年になるが、もともとはそば屋から出発したというから、そばがここの旅館の原点と言っていいかもしれない。ところがケロコさんによると、そばだけでなく親子丼も抜群に美味しいらしい。

 僕はここでその親子丼を食べていないけど、実は前々からそば屋のカツ丼、天丼などはどうしてあんなに美味しいのだろうかと思ってきた。女将の高橋仁美さんに聞いてみた。

 それによると、まず出汁をきちんととっていること。そばつゆと同じように、良質の昆布と鰹節をぜいたくに使っているのだ。それだけではない。驚くほどたっぷり入った鶏肉は生の伊達産。しっかりと弾力があって、旨味が詰まっているのだ。卵は、これも味が濃い上川産、コメは賞もとっているという「ゆめぴりか」。これらが、からみあって一体となっている。美味しいわけだ。親子丼と言ったら、家庭でも簡単にできる一品だけれど、やっぱりプロの味は違う。

 「すべて手作りで、できるだけ地場産のものを使うようにしています」と女将。これなら、カツ丼セット(九百八十円)、ザンギ定食(千三百円)、天丼(千二百四十円)なども、きっと美味しいに違いない。

 でも、僕はやっぱり、そば店に来たらそば。人気ナンバー一の天ざるそば(千四百六十円)など、江丹別と幌加内のそば粉を使った多彩なそばがある。うれしいのは、そば料理として、食べ始めると手が止まらないそばの素揚げ(三百二十円)、そば寿司(千百円)、揚げそば(千八十円)など、魅力的なメニューが用意されていること。なんと、日本酒も僕が大好きな地元の大雪の蔵、そして秋田の刈穂超辛口まである。次回は絶対、これらをつまみに飲んでみよう。

 無休。営業時間は午前十一時~午後三時、午後五時~九時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 おそば大好き。ランチに行くと、冷たいそばと天ぷら。いつも同じものを頼んでしまう。

 ところがこの前、「そば扇の親子丼がものすごく美味しい」と力説する人に会った。「おそば屋さんなのだからおそばでしょ」と思ったけれど、気になって食べに行ったら、本当に美味しかった。

 今まで食べた中で一番かもしれない。けっこう、つゆだく。そして、鶏肉が柔らかくて、大きくて、たくさん入っていた。味噌汁もいい出汁だ。次に行くとき、親子丼にするかおそばにするか、今から迷っている。

2021年02月09日号掲載