春光5ノ7ノ1・51-4230

 羊羹(ようかん)は、小豆で作った餡を寒天などで固めた和菓子。でも、なぜ羊の字がついているのだろう。調べてみたら意外。もともとは中国の料理で、羊の肉を煮たスープなのだそう。それが禅僧によって日本に持ち込まれたが、肉食が禁じられていたために小豆になった。そして江戸時代、甘いお菓子としての羊羹が誕生したのだという。

 ところでこの店、普通の住宅の前に「手造りようかん」と書かれたのぼりが一本立っているだけ。どうみても、素人っぽい商売にしか見えない。ところが、聞いてみてびっくり。なんと、創業は一九五三年。約七十年もの歴史がある、市内で唯一の羊羹専門店なのだという。


 三代目店主の城本泰行さん(54)によると、祖父は市内で警察署長も務めた警察官で、定年になったあと飴の工場を建て、間もなく羊羹製造に切り替えたそう。現在も味と作り方は当時からのものを引き継いでいる。原料は小豆と糸寒天、ビートグラニュー糖、水あめのみで、城本さんによると決して安いものに走らないのが信条。忙しい年末やお盆は一日置き、普段は週に一回は七時間かけて店の奥で製造している。

 

 販売しているのは、ただ一種類の味の羊羹だけ。銀紙でくるんだだけで保存期間が一週間のS(三百五十円)とM(六百九十円)、セロハン充填で保存期間が三カ月のS(四百九十円)とM(七百八十円)。店内には、テーブルに見本が置いてあるだけという究極のシンプルさなのだ。

 さて、甘いものが苦手の僕だけど、味見しないと原稿が書けない。うん、甘さ控えめでこれは美味しい。そして、ちょっと水羊羹を思わせるぐらいの柔らかさ。いくらでも食べられる。お土産にしたら、絶対にみんなから喜ばれる。いいもの見つけた。

 「お客はほとんどがリピーター。最近は若い人がけっこう買いに来てくれるんですよ。女子高校生なんかは、一本のまんま食べていますね」と城本さん。定休日は火曜日。営業時間は午前十時~午後五時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ
 違うお店を探してウロウロしていたら見つけたお店。羊羹は嫌いじゃないけど、甘いので一口か二口で十分。でも、せっかくだからと入ってみたら、羊羹しか売っていない。

 私が生まれたときぐらいに創業と、かなり古い。今は、3代目が当時のままの作り方で受け継いでいるという。昔、折詰の端っこに、必ず羊羹が入っていた。もう少し大きければいいのに、と思ったのを覚えている。

 余計なお世話だが、羊羹だけでやっていけるのか? でも、お客さんが次々に来る。繁盛しているようだ。

2022年03月15日号掲載