この意見募集には、明らかに「模範解答」なり「例文」なりが存在した。応募した人たちは、誰かに促されて、あるいは勧められて、頼まれて、指示さ れて意見を書いたとみられる。つまり、自分の意志で、自分の意見を述べたのではない。要するに、「やらせ」や「さくら」と呼ばれる行為と言っていいだろ う。

 今回の意見募集には、「早く地域に住む住民が安心して暮らせるようにしてほしい」という声が多数寄せられ、あたかも流域が洪水常襲地帯で、明日に でも洪水が起きるかのように読み取れる。しかし、かつて洪水を繰り返した天塩川は、開発局による様々な対策が功を奏し、最近は大きな災害は起きにくい状況 になっている。

 事実、一九九八年(平成十年)、開発局自身が天塩川流域の全世帯を対象に行ったアンケート調査の結果を見ると、洪水や土砂災害に対して、「安全だ と思う」「ある程度安全だと思う」と答えた人は八九%に達している。洪水対策として具体的に進めてほしいことは「河岸保護工事」「堤防の完成」「内水対 策」「河道の掘削」が合せて九三%。「ダムの整備を進めてほしい」と答えたのは、たった七%だったのだ。

 サンルダムは、天塩川の支流・名寄川の、そのまた支流のサンル川に建設されようとしている。ダムよりも上流の集水域面積は、天塩川流域全体のたっ た三%にすぎない。この限られた地域に集中して大雨が降ってくれれば、ダムは大きな治水効果を発揮できるのだろうが、そんな都合良く雨が降るはずもない。 残り九七%の流域で降る雨には、サンルダムは何の役にも立たないことになる。

(工藤 稔)

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