例えばの話、ですよ。来春四月から、大雪アリーナの名前が、「〇〇〇会館アリーナ」に、ときわ市民ホールが「△△建設ホール」に変わる、ということだ。今号三面の記事にあるように、旭川市が、ときわ市民ホールと勤労者福祉総合センター(一括募集)、総合体育館、大雪アリーナの四施設に「ネーミングライツ」を導入することを決め、現在スポンサーを募集中だ。

 友人五人にこの話を知っているかと尋ねてみたら、「北海道新聞の記事(十一月二日付朝刊)で読んで知った」というのが一人。あとの四人は、「初耳だ」と答えた。五人とも、「そんな大きな話、いつ、どこで、誰が決めたの? 市議会で議論があったって、あさひかわ新聞で読んだ記憶もないけど…」と言う。その反応については、後段で書く。

 本紙佐久間記者の取材によると、第三回定例議会の一般質問(九月二十日)で、 蝦名信幸議員(自民党・市民会議)が、「賛成する立場から」と前置きして質問している。議会で議論というか、説明というか、表に出たのはその一回だけ。記者は、その質疑の現場は取材しておらず、後日、録音を聞いた。質問は三分か五分か、答弁もそれくらいのさらっと流す感じだったとのこと。意見を聞くために取材した議員の中には、「知らなかった」という方もいたという。

 四施設を所管するのは市民生活部(市民生活課とスポーツ課)。説明によれば、ネーミングライツは、正式名称はそのままで、あくまでも「愛称」を付加するということで、条例の変更などの行政手続は不要だそうだ。議会に対しては、議長・副議長、各会派(無所属は除く)の代表、そして担当の民生常任委員会の正副委員長への説明で、終わり。その過程で反対や異論はなかったという。

 国内のネーミングライツの例としては、二〇〇三年(平成十五年)、東京スタジアム(東京都)が「味の素スタジアム」にされたのが第一号。今では、福岡ヤフオク!スタジアム(福岡ドーム)、日産スタジアム(横浜国際総合競技場)、京セラドーム(大阪ドーム)、楽天kobo スタジアム(宮城球場)など、大都市を中心に増加の一途だ。身近なところでは、札幌市の「ニトリ文化ホール」(さっぽろ芸術文化の館・旧北海道厚生年金会館)がある。

 さて、私の友人五人の反応は、「日本中の自治体がやってることだし、金になるんだから、目くじら立てるほどの問題じゃないと思うけど、現実として応募があるのかね」という肯定派が一人。あとの四人は、反対か、慎重論だった。紹介すると。

 ――そもそも、これらの施設は、私たち市民の税金でつくられたものだ。国や道からの補助金が入っているとしても、結局は私たち国民の税金なり、借金じゃないか。その市民の共有財産が私企業の宣伝のために使われるなんて、納得できない。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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