ちょっと郊外に出ると、田植えが終わった水田が薄緑色に煙って見える。ああきれい。初夏の前、この地に暮らしていて一番好きな季節。でも、このところ、何となく気分が重い…。

前週、二十二日号の「コケコッコー便り」は、イタリアのパスタメーカーのバリラ社が、カナダ産の小麦の買い付けを減らした、という話題だった。

今さらではありますが、「コケコッコー便り」について少し紹介すると。愛別町で、自然卵農園「あんふぁん」を営む村上謙一さん(63)が、食べ物にまつわる話題を中心に、農業のこと、暮らしのことをつづるコラム。毎月第四週に掲載している。村上さんは養鶏を始めて三十三年。飼料は自家製、鶏は平飼いだ。卵は旭川市内や近郊のお客のもとに定期的に配達する。人工的な色素や遺伝子組み換え作物とは無縁な餌を食べている鶏が産んだ卵は、健康で、安心で、何より美味しい。わが社の社員も隔週で配達してもらっている。

その村上さんが三月二十七日号で、小麦やそばなどへの除草剤・グリホサートの農薬残留基準が大幅に引き上げられる、と書いた。四月から、小麦はそれまでの五ppmから、三〇ppmへと六倍に。そばは〇・二ppmから三〇ppmへと百五十倍に緩和された。

グリホサートは米国・モンサント社が開発した除草剤「ラウンドアップ」の有効成分。あらゆる植物を枯らす農薬で、散布後、植物は徐々にしおれ、次第に茶色くなり、地下の根も腐敗して、最終的には植物全体が枯れて再生もできなくなる。グリホサートは、植物の生育に必要で、なおかつヒトや動物には存在しない酵素の働きを阻害するから、ヒトや動物の健康に対するリスクは低いとモンサント社は説明する。しかし、動物実験などで発がん性が指摘され、フランスやオランダなど個人への販売を禁止する国もある。日本ではホームセンターなどで普通に、大量に売られているのだが…。
村上さんのコラムを引用しよう。

――化学物質の残留基準は生涯食べ続けても健康に害が出ない量に個人差が等があるので、安全係数として百倍少なくして決められています。そばが百五十倍ですから、人類は二〇一八年四月をもって農薬耐性が一・五倍強くなったとでもいうのでしょうか。そもそも、現行基準の根拠をどのような理由で変更できるのでしょうか。

村上さんは、最近流行りの、スーパーなど大手流通業者が野菜などで自社ブランドを作るときに問題になるのが、虫などの異物混入や農薬が残留基準を超えてしまい、回収しなければならない事態だと気付いた。その解決策が、殺虫剤の残留基準の緩和だったとして、「虫一匹生きていけない畑にすれば、良いのです」と書く。そして。

――除草剤の場合は少し事情が変わります。小麦など収穫直前に除草剤で枯らすことにより登熟や乾燥を早め、収穫時期も計画的に決められてコスト・ダウンになるということです。問題があります。収穫直前に除草剤を散布するので、作物への農薬残留比率がどうしても高くなります。解決策があります。残留基準の緩和です。冗談じゃない。(引用終わり)

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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