「旭川を憂える零細企業の経営者(男・66歳)より」というメールが届いた。以下。

 ――旭川商工会議所が、創立100周年を記念する事業の一環として、「櫻井よしこ」の講演会を開く。演題は、「今、私たちが出来ることはなにか~北の大地から夢と勇気をもって~」だそうだ。

 櫻井よしこの肩書は、ジャーナリスト。だが、その実は、憲法改正を主張する極右団体の広告塔である。

 旭川商工会議所は、経済団体ではないのか。いつから政治的プロパガンダに肩入れする右翼の団体になったのか。櫻井よしこを呼んで、どんな情報を期待し、何を学ぼうというのか。全く理解できない。

 まちのことを本気で考えているなら、他に招くべき経済評論家や研究者は、いくらでもいる。

 経営者の仲間と話をすると、「どうして櫻井よしこなのかね」とか、「だれが櫻井よしこを呼ぼうと提案したのだろう」とか、「100周年だから有名人を呼ぶということなのかもしれないが、人選が極端だよな」とか、首をかしげる人がほとんどだ。口には出さないが。

 「何を話すか、聞きにはいくけど」と言う人もいるから、聴衆は多いだろうけど、経済の話、自分の経営のヒントを期待して参加する人はいないと断言できる。

 貴紙は、おかしなことはおかしいと、ちゃんと主張できる新聞だと思うから、会議所に取材して、どうして櫻井よしこを講師に選んだのか、私たちに教えてください。

 旭川商工会議所百周年の記念講演会は、今月二十五日(木)午後一時四十五分から、星野リゾートOMO7で行われる。事務局に話を聞いた。

 ――記念講演の講師の選定は、創立百年記念事業特別委員会(委員長・松野和彦副会頭、十一人)が担当した。委員会でさまざまな人の名前が挙がったが結論は出なかった。東京の講師派遣を専門にする会社に依頼すると、東国原英夫・元宮崎県知事やジャパネットたかたの高田明氏ら五人をリストアップしてくれた。その中には櫻井よしこ氏の名前もあった。正副会頭会議にかけたが、結論は出なかった。それで、議員九十八人に五人の候補を示してアンケートを取った。その結果、要望が一番多かったのは櫻井よしこ氏ではなかったのだが、一番の方はスケジュールが合わず断念。結果的に、櫻井よしこ氏に決まったということ。講師が誰であれ、人が入ってくれれば大成功だ。
 当初のチラシでは「定員は先着三百人」とあったが、六月末時点で申し込みは五百人を超えているそうだ。メールの主がおっしゃるように、「何を話すか、聞きにはいくけど」という人が多いのかも知れない。

 「聞きに行ってみる」という、商工会議所会員の経営者(68)に話を向けてみた。「有名人だからね。安倍首相のお友達だから、参院選に向けて、憲法改正について一席ブツんじゃないの?」と言いつつ、「おそらく百万円以上のギャラを出すんだろうけど、もったいないよね。地域が生き残れるかどうかの瀬戸際にいる、という危機感がないとしか思えない。そうした示唆を与えてくれる講師を呼べない、それもこのまちの実力だということだ。政治も、経済も、同じレベル…」と言葉を濁した。

(工藤 稔)

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