ちょっと前のことなのだけれど、航空自衛隊の「ブルーインパルス」が東京都心の上空を飛行した、と報じられた。以下、五月三十日付朝日新聞一面、ご丁寧に写真を二枚も使い、「都心上空 感謝描く」の見出しの記事。

 ――新型コロナウイルスに対応する医療従事者に感謝を伝えようと、航空自衛隊のブルーインパルスが29日、東京の都心上空で編隊飛行を行った。空自入間基地(埼玉県)を離陸した6機は、午後0時40分ごろから、都心上空1千㍍前後を約20分飛行。JR東京駅や東京タワー、都庁などのそばを通り、白いスモークを出して6本の線を描いた。(後略)

 毎日新聞は、一面の大きな写真のほかに、五面に囲み記事を掲載している。それを読むと、この空自による航空ショーは、安倍首相の「コロナ対策」の無策・無能ぶりから国民の目を逸らすのが目的だったことが分かる。以下。

 ――安倍晋三首相は29日、首相官邸の屋上で、都心上空を飛行した航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」6機の編隊飛行を観覧した。

 新型コロナウイルスへの対応にあたる医療従事者への敬意と感謝を示すための飛行は、同日午後0時40分ごろから約20分間行われた。首相は前日に首相官邸のSNS(ネット交流サービス)に「私からも改めて心からの敬意と感謝の気持ちを申し上げたい。本当にありがとう」とのメッセージを寄せており、秘書官らとともに屋上に上がって約10分間飛行を眺め、時折拍手を送っていた。(後略)

 テレビのニュースなどで流された「病院の屋上で手を振る白衣の医療関係者たち」の映像は、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)の屋上で撮影されたものだったそうな。航空自衛隊の飛行隊が航空ショーを披露し、地上では自衛隊病院のスタッフが手を振り、自衛隊の最高指揮官である首相が拍手を送る、これって“やらせ”の範疇ではないのか。しかも、税金の無駄遣い。その金を医療現場に回せ、という話だ。それを何の疑問も呈さずに垂れ流す報道機関って、何だろう。

 報道に関する疑問をもう一つ。十八日、現職の国会議員が二人、公職選挙法違反(買収)容疑で、同時に逮捕された。しかも二人は夫婦で、夫は前法務大臣。これぞ前代未聞、空前絶後、驚天動地…。

 詳細は省くが、報道によれば、奥さんの参議院議員は、安倍首相が「反安倍」の現職を落選させるために、地元自民党県連の反対を無視して放った刺客だった。現職の十倍の選挙資金一億五千万円を特別に与えていたという。夫の前法相は、首相の側近である。

 国会が閉会したその日夕、安倍総理の記者会見が行われた。例によって、会見冒頭の演説で首相は、次のように言う。

 「本日、我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては、大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感しております。国民のみなさまに深くお詫び申し上げます。この機に国民のみなさまの厳しい眼差しをしっかりと受け止め、われわれ国会議員はあらためて自ら襟(えり)を正さなければならないと考えております」

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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