時流に乗る性格ではない。逆に流行りに背を向ける性質(たち)だ。へそ曲がりだし。コロナ禍対策のGo Toトラベル・キャンペーンだって、「観光や外食関連の業界が大打撃を被っているのはその通りだろうが、旅行する時間があって、外食したり、土産を買ったりできる人だけが恩恵を受ける、忙しい下層国民は蚊帳の外、不平等だあ、不公平だあ。その金はぜーんぶ、貧乏なオレ達が納めた血税で賄われているんだあ」などと批判の目で見ている。「国が国民から強盗のようにむしり取った金を我が物顔でばら撒く、“ごーとートラベル・キャンペーン”のブラックジョークかあ?」と。

 そんな私が、そのごーとートラベルキャンペーンを利用してしまいました。すみません。紋別に行き、家人とデラックスツインの部屋に泊まり、温泉に入って、ぜい沢な夕食をいただきました。おまけに、地域共通クーポン券を使ってお土産まで買って。

 上等なキャビアを食べたことのない者が、「キャビアなんて」と言うがごとく、何年も夫婦でこんな豪勢な旅などしたことのない私たちは、財布から出て行った一万数千円が、安いのか、得をしたのか、よく分からない。なにせ、「家で納豆ご飯を食べるのが一番よ」が口癖の家人でありますから、外で食べてもさほど感動が湧かないようで。しかも、四千円のクーポン券を使うのも何だか後ろめたい気がして。「後から『返せ』って言われたらどうしよう」なんて…。

 帰途、美深のトロッコ王国と剣淵のアルパカ牧場に立ち寄って、午後には自宅に帰り、納豆ご飯の昼飯を食べた。「あぁ落ち着くねぇ」。Go Toトラベルには不向きの老夫婦だと悟った一泊二日の旅だった。枕はここまで。

 「その理由『語らぬ』ではなく『語れない』」(大阪府 遠藤昭・八日付朝日川柳)、もう一句「図に乗って学術会議にけちをつけ」(東京都 三井正夫・九日付同)――日本学術会議の任命拒否問題は、とんでもない展開になっている。

 菅義偉首相は、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から今回の任命について判断した」と意味不明の説明を繰り返すばかり。前首相は、幼児性丸だしの活舌でいい加減な話をペラペラしゃべり捲るタイプだったが、新首相は意味が分からない言葉で聞く者を煙に巻くのが得意らしい。

 新聞やテレビで報道されているから詳細は省くが、要は、首相が独立した機関に対して違法な人事介入を行ったのが問題で、菅首相は六人の学者の任命を拒否した法的根拠を示すことと、その拒否の理由を国民にちゃんと説明しなさい、ということだ。

 ところが、政権は学術会議に難癖を付けて、露骨に問題をすり替え始めた。忘れもしない「ごまめの歯ぎしり」というブログで、「脱原発」を強く主張していた河野太郎は、さすがは「河野談話」の河野洋平の息子だな、などと評価する声もあった。ところが、安倍晋三政権で大臣の椅子に座った瞬間、「脱原発は封印する」と宣言し、外務大臣になったら、世界を飛び回るから専用の飛行機がほしいと言い出したりした。何のことはない、稀代の変節男だったのだ。

 菅政権で行革相に就いた河野は九日、学術会議について「年度末に向けて予算、機構、定員について聖域なく見るので、しっかり見ていきたい」と述べたという。この発言は同日付の読売が一面で「政府が、日本学術会議を行政改革の対象とし、運営や組織について見直しの検討に着手した」と報じたことを受けての発言である。

(工藤 稔)

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