「七十五歳以上の貧乏な年寄りは、病気になっても、病院になど行かずに、売薬でも買って、自助努力で治せ。治せなきゃ、とっとと死んでしまえ」という、為政者からのメッセージである。

 十一日付毎日新聞の一面トップの見出しは、「年収200万円超 2割負担」「75歳医療費 370万人対象」「自公合意」。記事のリードは。

 ――公明党の山口那津男代表は10日の党中央幹事会で、75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる対象を「年収200万円以上(単身者)」(対象者数370万人)とする案で菅義偉首相と合意したことを報告した。自民党でも党幹部の会合で報告され、両党とも異論は出なかった。週明けに政府の全世代型社会保障検討会議を開催し、15日にも閣議決定する方針だ。(引用終わり)

 年収二百万円は、月収で十六万六千円。そこから所得税、住民税、国民保険料と介護保険料を持って行かれる。手元に残るのは、十五万円ほどか。裕福とは程遠い。

 年が明ければ五年後には後期高齢者。心身の急速な劣化を自覚する日々だ。血圧が、皮膚が、腰が…。家人も定期的に通院する。我が家の家計に占める医療費の割合は…。

 会社の経理担当の女性社員は、「消費税は、社会保障のために増税したはずじゃなかったの? 貧乏人からは、むしり取れるだけむしり取るのね」と憤る。「悠々自適の老後なんて、夢のまた夢ですね」と。

 政権与党のトップ二人が、このコロナ禍のタイミングで、年寄りの医療費負担の増額を決める。彼ら国会議員は、ボーナス(期末手当)を含めて約二千万円の給料(歳費)を手にし、そのほかに文書通信交通滞在費が年間千二百万円、立法事務費なる手当て七百八十万円の支給を受ける。しめて約四千万円の年収である。一カ月十五万円で生活する者の「もし病気になったら…」という怯(おび)えの心情など、彼らには別世界のおとぎ話なのだ。

 国は突如あきらめた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策として、イージス艦二隻を新造するそうだ。一隻二千五百億円以上。北朝鮮や中国からのミサイル攻撃に備える? 後期高齢者の医療費はケチって、そんな誇大被害妄想の軍備に維持費を含めると一兆円かい。美しい国ニッポン、ばんざーい。枕はここまで。

(工藤 稔)

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