東川町西5号北28・TEL82―2383

 蒸しパンを食べると、なぜか懐かしさを覚える。子どものころ、パンの代わりに母親が作ってくれたからかも知れない。でも、ここの蒸しパンはちょっと格別。蒸しパンには違いないけど、独自の製法と長時間低温発酵で味は大違い。これは、家庭で作るのはちょっと難しい。

 食材のこだわりはすごい。道産小麦に道産の塩、大雪山の伏流水、十勝産のてんさい糖…。生地には卵、油、乳製品は使わず、保存料は不使用と徹底している。

 作るのは、池田昌俊さん(49)、玲香さん(39)夫妻。実はこの夫婦、もともと北海道ともパン製造とも縁はなく、昌俊さんは神戸の公務員だった。ところが、ここで九年前から天然酵母の蒸しパン「しのぱん」を開いていた女性が、家庭の事情で東京に移転。共通の友人を通して打診を受け、店名を変えて引き継ぐことになった。オープンしたのは、昨年八月。

 「神戸では、蒸しパンなど見たことも食べたこともなかった」と昌俊さん。旧店のレシピを受け継ぎ、玲香さんが開発担当となってオリジナルの新商品も開発。旧店からの定番はきんぴらマヨネーズ(百六十二円)、ベリーベリークリームチーズ(百八十三円)など約三十種類。オリジナルは枝豆ベーコンチーズ(百九十四円)、クルミレーズン(百八十三円)など約二十種類。この中から、季節に合わせて常時二十五種類ほどを店頭に並べている。

 食べてみると、生地はむっちり。中に散りばめられたクルミやレーズン、照り焼きチキン、チーズなどとの相性はどれもこれも抜群だ。とにかく美味しい。直径は七センチほどと小さいけれど、ずっしり重く、二つ食べたら満腹になった。
 変わった店名は、店を引き継いだ縁にちなんで、フィンランド語で「ご縁」の意味だそうだ。

 不定休。営業時間は午前十時~午後五時(売り切れ次第閉店)。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 しのぱんを最初に食べたときの感想は、小さいのに高いなぁ。でも美味しい。いつの間にかファンになっていた。

 これまで東川の道の駅で買っていたけど、先日お店の前を通ったので入ってみた。すると、人が違う。聞いてみると、前の人は東京に行ったので、引き継いだという。よく見たら、店名も違っていた。

 ここの蒸しパンは、むっちりして、小さいのに食べ応えがある。主食にも、おやつにも、お土産にも最適だ。どれにするか迷うのも楽しい。家まで待てず、いつも車の中で食べてしまう…。

2020年04月14日号掲載