自民党が政権に復帰し、安倍晋三内閣が誕生してから、なぜか株価が上がり、円安が進む。「アベノミクス」などという造語に浮かれるマスコミは、その理由を説明してくれない。まるで、フワフワとつかみどころのない首相の言葉のごとく、私たちは、何となく株価は上がり、円安が進行していると知らされるだけだ。
家人は「円安の恩恵を享受する人なんて、私たち、地方の、普通の暮らしをしている庶民の周りにいるのかしら。灯油やガソリンの値段がみるみる上がって、間もなく電気料金だって値上げになるのよ。これって原発再稼動に向けた地ならしってわけ?」と憤りつつ、部屋の暖房器機のスイッチを切り、寒がる猫のために膝に抱える湯たんぽにお湯を注ぐのだ。街中のイルミネーションは、三・一一以前と変わりなく雪景色に映えてきらめき、テレビのニュースの最後に「電気予報」が流れて、あらら節電しなければダメなのね、なんて思い出したりして。
言語明瞭意味不明のアベノミクス語録に踊らされ、世界に冠たる借金大国が、さらに借金を膨らませることで景気が良くなったと勘違いしている間に、気がつけば私たちは普通の、戦争が出来る、危険な国に成り下がってしまう道に踏み込もうとしているのではないか。いえいえ、決して戯言ではない。見るがいい、安倍首相は、国民的議論や国会論戦はおろか、連立を組む公明党の慎重姿勢さえ意に介さず、「首脳会談で、集団的自衛権行使で日米関係がどう変わるのか、地域がどう安定していくのか議論したい」(十三日、NHKテレビのインタビュー番組)と述べて、集団的自衛権の行使を禁じている憲法解釈の見直しをオバマ大統領への“手土産”にすると公言してはばからない。
自衛の隊を、国防するための軍にするための目くらまし。夏の参院選に向けて、ほら、一万円札を青天井で印刷しまくり、お金がジャブジャブ音を立ててあふれかえる状況が見えるではないか。ほんの一時、景気が良くなったように錯覚させて、憲法九条なんか飛んでいけー。これが「ニッポンを取り戻す」の意味でした、チャンチャン。
(工藤 稔)
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