前号の小欄「地酒で乾杯やってる場合か」に、たくさんの人から電話やメールをもらったり、お会いした折に話題になったりした。その中の一つ。友人が「乾杯条例を提案した議員から、『あの直言、どう思う』って電話がかかって来たゾ」と言う。「オレは、工藤さんは飲みに出たら、最初の一杯はともかく、必ず日本酒を、しかも地元の酒を飲むよ。条例の趣旨自体には賛成なんだと思うけどな、と答えたけど、もう少し丁寧に書いた方がよかったんじゃない?」と。

 忠告に従い、どこかの総理にならって反省し、丁寧に説明させていただく。ちょうど良い例がある。富良野市議会が十三日、「まずはふらのワインで乾杯条例」を全会一致で可決した。十四日付の各紙の報道によると、条例は「ふらのワインとぶどう果汁で乾杯する習慣を広めることが目的で、市と事業者に促進策を命じるとともに、市民に協力を求めている」という。

 富良野市議会では、この条例を議員提案するにあたって、十月二十五日から十一月五日まで、「パブリックコメント」を実施している。もちろん、それ以前に、まちを挙げての「ふらのワインぶどう祭り」の開催や、市民レベルで地元産ワインを楽しむ集いがあちこちで企画されるといった、長い時間をかけた素地があっての条例制定なのだ。そんな理念条例に意味はないし、条例に馴染まないという声は当然あるにしてもだ。片やパブリックコメントも、市民説明会も、一切省いて、いきなり議員運営委員会に出してきて、この議会で条例をつくれば道内初だ、それはないでしょう。

 かつては「北の灘」とよばれるほど多くの酒蔵があり、今も三つの蔵がそれぞれ特徴のある酒を醸している、酒造好適米の生産に果敢に取り組む農業者がいる、酒屋さんたちも、組合で、個々で、「酒どころ旭川」を売り込むイベントを企画して頑張っている。それは充分知っているし、日本酒は旭川のまちづくりの一つの大きな要素だと、本気で思う。だからこそ、流行や物真似じゃなくて、もっと地道に、ひたひたと「酒どころ旭川」を市民全体に認知してもらうような活動を続けながら、いい場面で、市議会として「最初は地酒で乾杯をしましょう」とアピールを決議する、そのあたりが落としどころではないの?

 違う方からは、「あの議員、あんたを侮辱罪で訴えるって息巻いてたぞ」なんて情報もありました。気をつけなくちゃ、「侮辱罪」で訴えられたら二回目…。枕はここまで。

(工藤 稔)

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