こんなに簡単に変更できるならば、なぜ、市民や市議会の「異論」や「反対」をあれほど頑なに拒み続けたのだろう。聞かされる側が照れくさくなって、頭を掻きつつ苦笑いしてしまうほどの大転換だ。同じページにある「新市庁舎の基本設計案見直し」についての話である。

 設計変更の詳細は記事を参照していただくとして、こんな行政手法がまかり通るのだろうか。ことは設計の一部を「修正する」とか「見直す」というレベルではない。

 いいですか、一階に配置するとしていた「市民活動スペース」を大幅に縮小する、レストランの計画もやめる、なのだ。市が二〇一六年五月に公表した「基本計画骨子」文書の冒頭には、新庁舎建設の基本理念として「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」とある。説明にいわく、「市民の多様な活動の拠点となるような場を整備するとともに、市役所を気軽に訪れ、集えるような魅力的な場を整備することにより、市民や住民組織など多くの人々が訪れにぎわう庁舎」「芸術や文化、ものづくりのまちである旭川を内外に発信する機能を整備することで…」、やめよう、虚しくなる。その「シビックセンター」の象徴の一つが「市民活動スペース」だったはずではないか。それが「大幅に」縮小される。

 もう一つ。「骨子」には、「新庁舎は二期に分けて段階的に整備することとし、一期棟は約二万三千㎡、二期棟は七千㎡とします」とある。現在は民間ビルを賃借して入居している農政部と教育委員会は、二期棟に入る予定だった。二期に分ける理由として、「三万㎡を一度に整備した場合、工事期間が短期間となるため、地元企業の受注機会が限定的となるほか、単年度当たりの財政負担が大きくなる」と説明している。

 ところが、「変更案」では、吹き抜けスペースを減らし、二・三階の張り出し部分を増やすことでフロア面積を確保して、農政部と教育委員会を一期棟に集約するという。二期棟の計画は消滅するという判断なのか。とすれば、新庁舎建設のまさに根幹に関わる変更ではないか。地元企業への配慮や単年度当たりの財政負担への対策はどうするのだ。

 これまで、民間委員の庁舎整備検討審議会、市議会の調査特別委員会、関係団体との意見交換会、タウンミーティング、市民説明会などなど、西川将人市長が言うところの「丁寧に説明してきた」数々の手続きは全て、「二期に分けて建設」が前提ではなかったか。市民や議会が「賛成」した前提が崩れた、根幹部分が大幅に変更されたのだ。

 同じく計画の根幹に関わる問題がある。文化会館である。「骨子」は、「新庁舎建設に当たっては、文化会館の建て替えと合わせた一体的な敷地利用計画とします」と明記している。説明には、「新庁舎は、『市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター』の実現に向け、周辺施設と連携したにぎわいの創出を図っていくこととしており、そのためにも、新庁舎と同じ敷地内で文化会館を建て替えて一体的に整備することにより、お互いの機能の連携が図られ、更なるにぎわいの向上が期待できます」と謳(うた)う。新庁舎はシビックセンターであり、文化会館の建て替えと一体的に整備するのだと、明確に宣言しているではないか。

(工藤 稔)

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