「今の政権の下では、郵便ポストの色まで総理大臣が決めるのね」、そんな気分でいた。現行八%の消費税を一〇%に増税するときに、クレジットカードなどのポイントを五%還元するとか、小売店でキャッシュレスで買い物をすると二%分を還元するとか、ぜーんぶ安倍首相の提案で決まる。これって、おかしくないか? 歴代の総理大臣は違ったんじゃないか? と。

 片山善博・前鳥取県知事、元総務大臣が「世界」十二月号に、「日本は法治国家か―消費税率『首相判断』報道にみる租税法定主義の崩壊」と題して、その“おかしさ”をズバリ書いている。書き出しは「日本は法治国家なのだろうか。筆者のこのところの感想と疑問である」。片山さんは、法治国家としての条件や原理を幾つか挙げながら、「消費税のあり方をめぐるこのところの動きを見ると、権力者の恣意的な判断によって税制が左右されている姿が目に余る」と指摘する。

 安倍首相が十月十五日の臨時閣議で「平成三十一年十月一日に、消費税を二%引上げて一〇%にする」と発言し、そのための準備を進めるよう指示した。そのニュースは、マスメディア各社が大々的に報道した。

 片山さんは「これはいったい何なのか」と書く。来年十月に一〇%に引上げられることは法律に明記されているし、そのための配慮や準備が必要なことは自明だ。今さら臨時閣議まで開いて発言したり指示したりする意味などないだろうにと。

 そして、これまで二度にわたり一〇%への増税を実態として首相の独断で延期したように受け止められている背景には、マスメディアの報道があると看破する。安倍首相が「増税延期」を表明した際、マスコミの多くは「一〇%への引上げ延期」と頓珍漢、ミスリーディングな報道をしたと片山さんは指弾する。いわく「税率など税制の重要な事柄を決める権限は国会にしかない。たとえ首相であっても税率を決めたり、変更したりすることはできないのだから、まずは首相の越権発言をたしなめてしかるべきだった。あるいは、せいぜい『首相が消費税引上げを延期したいとの考えを示した』、ないし『延期のための法案を提出する意向』という程度の淡々とした報道にとどめるべきだったと思う」。

 そして、その首相の発言にもかかわらず、国民の中にも、いわんやマスコミ関係者の中にも、「今度も、増税を延期するに違いない」とする見方が少なからずある、と書く。「それは権力者の言葉の重みも信頼性も欠けたことを意味するとともに、なにより法律の規範性が失われたということでもある。たしかに法治国家はガラガラと崩れつつある」。これが結び。法治国家の対義語は、「専制国家」、あるいは「独裁国家」である。枕はここまで。

 前号の小欄で、旭川市が新市庁舎の「基本設計案」を大幅に変更する方針を決めたことについて書いた。今号一面は、変更のより具体的な内容を報じている。前号の記事で、「一階のレストランの計画もやめる」と書いたが、間違いだった。レストランは当初の計画通り一階に設ける。ごめんなさい。訂正します。

 さて、新庁舎は、「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」になるはずであった。その象徴の一つが一階に設置される「市民活動スペース」だった。変更後の一階平面図を見ると、広さは定かではないが、エレベーターやエスカレーターの近くに、ささやかな「スペース」が設けられるようだ。「シティープロモーション」のスペースも、申し訳程度に設置されるみたい。市議の一人は、「シビックセンターの看板を下ろしたくないから、意地でもつくるんでしょうね。四畳半ほどの市民活動スペースで何をやれって言うのでしょう」と笑う。

(工藤 稔)

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