十二月四日号の小欄で、片山善博・前鳥取県知事、元総務大臣が「世界」十二月号に書いている「日本は法治国家か―消費税率『首相判断』報道にみる租税法定主義の崩壊」を引いて、安倍政権がこの国を専制・独裁国家に導こうとしているのではないか、と書いた。

 読者でもある友人から「知っていますか?」とメールが届いた。「赤旗の一面トップで、内閣官房参与を務めている安倍首相のブレーンが、消費税増税に反対する論陣を張っているよ」と教えてくれたのだ。確かめると十一月十八日付「しんぶん赤旗」日曜版一面に、内閣官房参与の藤井聡・京都大学大学院教授のインタビュー記事が載っている。共産党の機関紙である赤旗に、このような肩書の方が登場するのは極めて異例だ。その〝主張〟の概要を紹介しよう。

 ――二〇一四年に消費税を五%から八%に上げた結果、家計の実質消費支出は一七年までの四年間で七%も減った。国民生活が七%も貧困化したということ。日本はまだデフレから脱却していない。消費税を増税すれば、間違いなく国民の貧困化が加速する。

 ――大企業向けに法人税の減税が繰り返されてきた。消費税増税は、その減収を穴埋めするためにほかならない。今なすべきは消費税増税ではなく、所得税の累進課税を強化し、法人税率を引き上げること。企業は多くの内部留保を抱えている。法人税を引き上げることで内部留保が実体経済に還流され、大きな経済効果が期待できる。

 ブレーンの一人が、消費税増税に明確に反対する「赤旗」の紙面で、異を唱える。くだんの友人は、安倍首相が三度目の「増税延期」を準備している表れではないか…、と読むが、さて。

 別の読者は、元国税調査官で作家の大村大次郎さんのメルマガを送ってくれた。「消費税のこと、ちゃんと考えた方がいいと思う」とある。税金のプロは「そもそも消費税は社会保障になど使われない。この税金は欠陥だらけ」だと鋭く指弾する。

 素直で、無垢な日本国民は、「上がった分の二%の消費税は、増え続ける社会保障費に使われ、ちゃんと自分たちに還元される」と思い込まされているし、ちゃっかり軽減税率の適用を勝ち取った大新聞はどこも「消費税増税やむなし」の論調である。だが、実は、全く違うのではないか。大村さんの論は、奇しくも藤井聡・内閣官房参与の警告とぴったり符合し、「消費税増税は、大企業の法人税減税の穴埋めにほかならない」とデータを示して明確に指摘する。その大要を。

 ――日本人というのは、根の部分で国の指導者を信じ切っているところがある。「まあ、少しくらい悪いことをしても、基本的にはちゃんと国のことをやってくれているだろう」というふうに思っている。だが、財政、税制に関する限り、そういうことは絶対にない。

 ――消費税は、存在意義そのものに大きな疑問、嘘がある。消費税が創設されるとき、国は「少子高齢化のために、社会保障費が増大する。そのため、消費税が不可欠」と喧伝した。だが、消費税は、社会保障費などにはほとんど使われていない。何に使われたのかというと、大企業や高額所得者の減税の穴埋めに使われた。それは、消費税導入前と現在の各税目を比較すれば一目瞭然。

 ――消費税が導入されたのは一九八九年のこと。その直後に法人税と所得税があいついで下げられた。また消費税が三%から五%に引き上げられたのは、一九九七年。その直後にも法人税と所得税はあいついで下げられた。この法人税の減税の対象となったのは大企業。また所得税の減税の対象となったのは、高額所得者だった。

 ――所得税の税収は、一九九一年には二十六・七兆円以上あった。しかし、二〇一八年には十九兆円になっている。法人税は一九八九年には十九兆円あった。しかし、二〇一八年には十二兆円になっている。つまり、所得税と法人税の税収は、この三十年の間に、十四・七兆円も減っている。一方、現在の消費税の税収は十七・六兆円。消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税分の穴埋めで使われている。消費税によって、新たに使えるようになった財源は、わずか三兆円に過ぎない。

(工藤 稔)

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