七日付の朝日新聞を広げて、たまげた。見開き全面二ページに、油にまみれた海鳥の写真と「嘘つきは、戦争の始まり。」と白抜きの大きな文字。次のような文言が続く。

 ――「イラクが油田の油を海に流した」その証拠とされ、湾岸戦争本格化のきっかけとなった一枚の写真。しかしその真偽はいまだ定かではない。ポーランド侵攻もトンキン湾事件も、嘘から始まったと言われている。陰謀も隠蔽も暗殺も、つまりは、嘘。そして今、多くの指導者たちが平然と嘘をついている。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。今、人類が戦うべき相手は、原発よりウイルスより温暖化より、嘘である。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。
 出版社「宝島社」のこの広告は、誰に向けて発せられたものなのだろう、もちろん一義的には朝日新聞の読者に対してだろうが…。と考えながら、毎日、日経、道新と順に開いてみたが、見当たらない。もし、あの方の目に触れる可能性があるとすれば、憲法改正について「自民党総裁としての考え方は相当詳しく読売新聞に書いてある。ぜひそれを熟読して…」と国会で堂々と答弁した新聞には載せるかな、と開いみたら、ありました。同じく見開き二ページ。写真は、嘘つきが手を入れると噛みちぎられると言われる、イタリアの史跡「真実の口」に差し入れられようとする男の手。「敵は、嘘。」の大きな字。いわく。

 ――いろいろな人がいろいろな嘘をついている。子供のころから「嘘をつくな」と言われてきたのに嘘をついている。陰謀も隠蔽も改ざんも粉飾も、つまりは嘘。世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか。いい年をした大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。

 この広告が載る前日、六日朝のNHK「日曜討論」は、各党首らを招き「政治はどう動く」というタイトル。安倍晋三首相は、スケジュールが合わないとのことで事前収録の映像での出演だった。解説副委員長の質問に答える形で約三十分、ほとんど独演会。その中で、沖縄の辺野古新基地建設について次のように説明した。

 ――いま、土砂が投入されている映像がございましたが、土砂を投入していくにあたってですね、あそこのサンゴについては、移しております。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたんですが、これは砂をさらってですね、これもしっかりと別の浜に移していくという、環境への負担をなるべく抑える努力もしながら行っているということであります。

 この発言は、ツイッター上で大きな話題になった。「サンゴを移植したというのは初めて聞いた」という声も相次いだ。中には、「安倍首相は嘘を言っている」と非難する意見も少なからずあった。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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