今冬の旭川は雪が多かった。少雪だった昨年の三月上旬は五十㌢を切っていた積雪が、今年は九十㌢。ほぼ二倍だ。先月、弊社の駐車場に隣接する住宅の雪庇が大きく成長したため、家主に善処するようお願いした。で、私の知人の屋根専門の会社に雪下ろしを頼むことになった。

 屈強の若者三人がやって来た。ママさんダンプを肩に、梯子(はしご)を駆け上がるように上る。見ていると、彼らは、その小型のママさんダンプを縦横に操って、固く締まった雪を次々に下に落とす。無駄な動きは一切ない、これぞプロの仕事だと感心して眺めていた。

 しばらくすると、社長が顔を見せた。所属する中小企業家同友会道北あさひかわ支部で知り合った五十代の経営者。私が、「さすがプロだね。感心するよ」と声を掛けると、彼は社員を褒められたことに謙遜の気持ちを顔に表しながら、次のように答えた。

 ――道具も違うんですよ、工藤さん。ホームセンターで買ったものは、使い物にならないんです。うちは和田商さんで買います。値段は少し高いけど、プロ仕様。モノが違います。それをさらに鉄工所に頼んで補強してもらうんですよ。だから、ああやって固い雪にも使える。

 ――スノーダンプだけでなくて、スコップでも、電動工具でも、値段が安い一般向けのモノと、値段は高いけど、その分丈夫で長持ち、そして使いやすいプロ仕様のモノと、ちゃんとあるんです。見た目はあまり違わないから、一般の人には分からないかも知れませんけどね。

 知りませんでした。除雪の道具も、夏の畑のスコップや鍬も、ぜーんぶ○○マックで揃えていた。古くもない鍬の柄が折れて、その材質が柔らかな木だと知ったのに、疑問を持たなかった。○○マックの売り場にある数種類が、消費者としての自分が選択できる、全てのアイテムだと思い込んでいた。偉そうなことを言ったり、書いたりしていているのに。もうすぐ七十歳になるというのに。不明を恥じる。

 会社の除雪に使っているスコップの取っ手が折れて、使い物にならなくなった。プラスチックの取っ手の部分を車が踏んだらしい。屋根のプロの話を確かめるチャンスである。流通団地の和田商さんに向かった。建設資材販売業。一般向けの小売りもする。

 こちらが求めた「ステンレス製の、少し大き目のスコップ」は扱っていないとのこと。「値段が高くなりますし、鉄と比べて強度もありませんから」と担当の社員が説明する。信頼できる接客姿勢だ。何種類か見せてくれて、最後に、「これはどうですか?」と取り出したのが、スコップ面に穴を空けて重量を抑えた、堅そうな木の柄の、プロ仕様のスコップ。一目で「これだ」と決めた。二千六百円也。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。