娘がフィンランドで暮らしている。半年に一度ほどのペースで、コメや乾麺、海苔など娘の好物を段ボールに詰め込んで送る家人は、気をもむ。「日本と違って、地続きよ。ロシアと千㌔以上の長い国境を接しているのよ。プーチンの軍隊、フィンランドに攻め込んだらどうしよう。一カ月分くらいの食料を備蓄しておくようにメールを送るわ」と。

 ウクライナから届く、街と市民の惨状の映像を毎日毎日見せられて、日本国中が浮足立っている。ロシアが北海道を獲りに来る、北朝鮮がミサイルを発射する、中国が尖閣諸島に攻め込むぞ…、明日にも戦争が始まる可能性があるような、だから、軍事費を増やして備えなければならないぞ、みたいな。

 日本経済新聞が四月二十二日から二十四日に行った世論調査で、国内総生産(GDP)比で一%だった目安を二%以上へ引き上げるべきだとの自民党内の意見について、「賛成」が五五%、「反対」が三三%だったと報じた。記事には次のようにある。

 ――支持政党別に分析すると与野党それぞれに濃淡が見られた。自民党支持層の賛成が六四%だった一方、公明党は六割弱だった。立憲民主党は三割強、日本維新の会は七割弱だった。特定の支持政党がない「無党派層」は四三%だった。

 世代別にみると十八~三十九歳の賛成が六五%、四十~五十歳代は五九%、六十歳以上は五〇%で、年齢が高いほど消極的な傾向がみられた。性別では男性の賛成が六三%、女性は四三%だった。(後略・引用終わり)

 私は、日本は地政学的に極めて安全な国だと考えている。歴史的にみても、敵国に攻め込まれたのは二回しかない。鎌倉時代の一二七四年と一二八一年の「元寇」と、一九四五年の沖縄戦禍である。沖縄は、日本帝国が仕掛けた戦争で反撃を喰らい、多くの民間人も巻き込まれた。二回の元・高麗軍の襲来は、事前の情報から鎌倉幕府は防御の態勢を整えて応戦し、大雨風が吹き荒れる幸運も手伝って撃退している。

 言ってみれば、海の向こうで、船を建造し、兵隊を集結させ、その食料やら弾薬やら馬やらを確保しているという情報がこちらに伝わって、襲撃に備えることができる、ということだ。島国・日本に自然に備わった強固な防衛力である。

 そんなことを考えていたら、あの小林節先生(慶応大名誉教授)が日刊ゲンダイ・デジタルで、「敵基地攻撃(反撃)能力保有」論について述べているのを知った。我が意を得たりである。以下、その「肝」を。

 ――第二次世界大戦に対する反省から、憲法九条を制定し、「戦力」と「交戦権」という国際法上の戦争の手段を自らに禁じたわが国は、「専守防衛」というユニークな防衛政策を堅持してきた。

 つまり、①こちらからは海外に打って出ない。②しかし、独立主権国家の自然権である自衛権はわが国にもあるのだから、外敵が侵入してきたら、軍隊ではない自衛隊で、日本の領域と周辺だけを用いてしっかり撃退する。

 これは、「やられてからやり返す」という原則では「やられて滅ぼされてからではやり返せないのでは?」という疑問に逢着(ほうちゃく)してしまう。だから、「相手が攻撃態勢に入ったらその基地を叩いていい」、さらに、「相手は移動式のミサイル発射装置を複数使っている以上、その指揮命令の中枢を撃たなければ自衛は全うできない」という結論に至る。

(工藤 稔)

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