市議会議員の高橋英俊さんがアップしたフェイスブックの投稿に、本紙にコラム「北の家族はじめました」を書いている松本浩司さんがやわらかに、でも普通の市民の目線で強く反論した。話のテーマは、旭川市立大学に二〇二六年春に開設される新学部の名称とカリキュラムについて。出来るだけ投稿文を尊重しながら、大意を紹介しようと思う。

 市立大学誕生のきっかけとなった市民運動をリードした「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」の会員らが六月二十六日に開かれた市議会の本会議を傍聴し、その後の特別委員会は傍聴せずに、市議の会派控室を訪れて説明をしようとした行動を高橋市議は、「某市民団体」と呼んで次のように批判する。

 ――本件問題の議員達の真剣な委員会での質疑には興味がなく、単に自分たちの主張だけが絶対でありそれを押し通そうとしていたにすぎなかったのではないか、との疑問を抱かざるを得ませんでした。

 本来、たとえ意見の相違があっても、本件について真剣に考えて質疑をする議員の意見や主張をしっかり傍聴して理解するよう尽力し、それらを踏まえ、理論調整をして自らの見解の実現のために会派をまわって交渉、説得するのがあるべき姿勢ではないでしょうか。
 そういう議論の中で、彼らの主張に真実があれば、たとえ今は少数でも、やがて多数派になっていくのではないでしょうか。議論と討論に基づく民主主義とはそういう制度ではないでしょうか。(中略)

 ――私は、まちづくりには市民そしてNPOの力が必要不可欠だと考えています。旭川市立大学のあり方についても、理想を抱き意見を述べ行動できる方々の力が必要だと信じています。

 本件問題をうわべだけの政治パフォーマンスや政争の道具に利用することを良しとせず、旭川市立大学新学部の理想像について党派にかかわらずしっかり議論ができる市民とともにこれから一緒に創り上げていけることを私は切に願っています。(高橋市議のフェイスブックからの引用終わり)
 この投稿に対して松本さんは、反論する。以下。

 ――(前略)意見の相違はあって当然だし、アプローチの仕方はいろいろだろうし、議論は大いにすべきだと思います。

 でも議論するには情報が必要だし、ニセコ町が取り組んだように、政策決定プロセスから見えるようにしてほしい。

 議員さんがどれだけ立派なのかは知らないけれど、その情報を得る努力を市民が怠ってるというのなら、もうそこで萎えちゃいますよね。

 事実として、六月二十六日の大綱質疑では市民団体のメンバーをはじめ多くの人が傍聴してました。
 もちろん、一部始終ではありません。皆さん仕事がありますので。傍聴していたら〇、傍聴していなかったら×、というのは賛同できません。「こんなに真剣な質疑をしているのだから傍聴すべき」というのは、ちょっと目線が違うのではと。

 (中略)深い理解があるわけではないですが、「某市民団体」は長い間、旭川の未来を考えて真剣に議論し、提案してきているのではないでしょうか。一市民としては、それがロビー団体のように言われると、首をかしげてしまいます。(「政争の道具」というのにも驚き。よく分からない)

 議員がこの投稿で言いたいことの一つは、「自分の意見が絶対の正解だと勘違いしない方がいい」「きちっと傍聴してから発言・行動せよ」ということでしょう。ちゃんとアプローチの仕方を考えて理想に向かっていこうよ、というメッセージとも解釈できるかと思います。

 その一方で、議会としてこの問題についてどれだけ真剣に市民に提起してきたのかと思ってしまった。こうなる前に予め市民団体の意見を聴取し、理事者あるいは大学法人とすり合わせをしてきたのか、どうか。少なくとも自分は新聞で知ったし、新学部の概要について突然すぎてびっくりしました。議員の皆さんは、大学法人の考え方や方針を事前に掴み、その上で「真剣な質疑」に至ったということなのか。ならそれを、なんらかの形で見せてほしい。議場に来い、というのではなくて。

 きちんと全て傍聴して真剣に情報を得なさいという主張が通れば、市民は何もできなくなる。何かあれば「議会詣で」をしなさい、ということであれば、ますます議会を遠く感じてしまうのではないでしょうか。(後略・引用終わり)

 高橋議員の本業は弁護士。あの小林節氏の教え子だそうだ。理論家で、弁も立つ高橋議員に果敢に挑む元新聞記者・松本さんの文言が、とてもさわやかに、頼もしく感じたのだった。

 さて、小紙に絵とエッセイ『手のしごと』を執筆している漆芸家の堀内亜理子さんから、「安代漆工技術研究センター四十周年記念展」の案内ハガキが届いた。今月八、九日に、修了生四十三人が出品して盛岡市の岩手銀行赤レンガ館で、展示販売会が開かれる、とある。裏に小さな字の短信があった。彼女らしい、いい便り。紹介しよう。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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