四月十八日号の小欄の見出しは、「『ふるさと納税』って、なんのことはない『高所得者』が得する制度じゃないの?」。道北の利尻町のふるさと納税の返礼品だった町産のウニに外国産を混ぜていたとして、厚岸町の水産加工会社の元社長の男が食品表示法違反の容疑で逮捕された、というニュースから、ふるさと納税の制度について疑問を投げかけたのだった。原稿の締めは次の通り。

 ――二〇一九年から、納税額の三割という上限が決められ、地域に縁の深い商品に限定されたとはいえ、住民税の納税額が多い人ほどたくさんの返礼品を受け取る権利がある、のだ。高額納税者、つまり所得が多い人ほどこの制度のメリットを享受できるわけだ。本来、所得再配分の手段であるべき税が、高所得者を優遇する逆進性を伴っているという事実は動かしようがない。

 今月になって、お盆の帰省時期ということなのか、新聞各紙が一斉に、という雰囲気で、この「ふるさと納税」を社説のテーマに取り上げている。各紙の税に対する考え方が分かって面白い。紹介しよう。

 【毎日】四日付、見出し〈制度を抜本的に見直す時〉。本文「税制をゆがめる膨張ぶりだ。もはや放置できない状況である」「寄付総額の抑制を急がねばならない。住民税の約二割までが目安の控除割合の引き下げや、高額所得者の利用に追加的な制限を課すことが有効だろう。最終的には返礼品を廃止し、見返りなしの寄付だけとする制度にすべきだ」

 【朝日】十三日付、見出し〈ゆがみ拡大 放置するな〉。本文「名目上は善意の寄付だが、実態は節税の手段になっている。年数千億円の税収が消え、財政のひずみも招いている。そんな不合理や不公正が広がるのを、これ以上放置してはならない」「しかし、政府の腰は重い。最近、経費算定基準を厳格化したものの、抜本的な見直しは避けている」「広がる弊害を前に見て見ぬふりを続ける無責任さを自覚すべきだ」

 【読売】十七日付、見出し〈返礼品や節税目的でいいのか〉。本文「ふるさと納税を巡り、自治体間で税収を奪い合うかのような現象は見苦しい。『故郷やゆかりのある地域を応援する』という本来の趣旨に立ち返り、見直し策を講じるべきだ」「善意に基づく制度のはずが、見返りばかりに注目が集まってしまっているのは健全とは言えまい」「寄付を受けた自治体には、使途や成果を明確にしてほしい。誰もが納得できる形で地域の活性化を図っていくことが大切だ」

 ちょっと長い枕は、ここまで。六月六日号の小欄で、「メルトダウンから12年、隣国の民は覚えているのに、テメエたちは忘れたか――」の見出しで、東京電力福島第一原発の敷地内に溜まり続けている「処理水」の海への放出について書いた。

 七日付朝日は一面で、「処理水放出 月末にも」「日米韓首脳会談後に決定」の見出しで、訪米中の岸田文雄首相は米韓両国の首脳会談の後に、処理水放出の時期を決定する、と報じた。記事には次のようにある。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。