農家の稲刈りもそろそろ最終盤だ。「質はともかく、量はもっとあると思っていた。暑さで成長が進み過ぎたせいだな。平年以下の出来だ」と米作農家の友人は言う。稲刈りが始まって、ようやく猛暑の影響が予想以上だったと分かったとのことだ。

 今夏の歴史的な猛暑は、地球規模の「温暖化」の負の影が、私たちの足元まで及んできていることを教えている。ホッキョク圏の氷が融けて困っているホッキョクグマの姿や、海面上昇で水没の危機に直面する南太平洋の島国の映像を見て、「あらら、可哀そうに」と同情している場合ではないということだ。

 ロシアとウクライナの戦争が、私たちの暮らしにこれほど直結しているとは知らなかった。世界有数の穀倉地帯・ウクライナで戦火が広がったことで、牛の飼料や畑・水田の肥料が高騰している。近ごろはなぜか騒がなくなったが、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の影響で苦境にある国内の農家の離農に拍車がかかるのは目に見えている。旭川地域でも郊外を走ると離農した農家の廃屋の多いこと。

 さて、そこで食料自給率の話だ。日本の食料自給率はカロリーベースで三八%だそうだ。ちなみに、カナダ二六六%、オーストラリア二〇〇%、アメリカ一三二%、フランス一二五%、ドイツ八六%、イギリス六五%、スイス五一%などとなっていて、先進国の中で日本は最低の水準だ。
 農水省が発表しているデータによると、戦後すぐ一九四六年(昭和二十一年)の食料自給率は八八%だった。その時代、主食はコメだった。それから国が次第に豊かになるにしたがって、食生活は欧米化していく。コメを食べなくなる一方で、肉やパンの需要が急激に増えた。農水省が発表している品目別自給率によれば、現在、コメの自給率は主食用において一〇〇%だが、牛肉に関しては三六%。輸入に頼っている飼料で育ったものを除外すると、牛肉の自給率は一〇%にまで下がる。同様に豚肉は六%、鶏肉は八%と著しく低い。

 円安が進行して一ドルが百五十円になりそうだ。牛や豚や鶏に与えられる配合飼料や混合飼料の原料、トウモロコシやコウリャン、小麦、大麦などの穀類、大豆油やナタネ油などの搾油工程で出る植物性油粕など、ほとんどは外国産だ。ウクライナ戦争と円安のダブルパンチで、飼料の価格は二〇二〇年の一・五倍に値上がりしているという。

 買い物に行くたびに、家人は食料品の値上がりを嘆く。「一年前の二倍になっている感覚だわ。貧乏人は飢え死にしろってことなの?」と。そしてイスラエルとパレスチナの戦争の映像、封鎖されたガザ地区の惨状を眺めながら、「私たちももし、輸入が止められたら、どうなると思う? 肉を食べなければ、夏の間は自給自足でやれるけど、冬が長いからね…」とマジメな顔で心配する。

 政府は二〇三〇年には食料自給率を四五%まで引き上げる目標を掲げているそうだ。だが、どう見ても実現できそうにない。マジで、食料を自給できる態勢を構築しなければ、と思う。「敵基地攻撃能力」なんて話をしている場合ではないぜ、ホントに。

 ネットをフラフラしていたら、小林節・慶応大学名誉教授のコラム『ここがおかしい 小林節が斬る!』にぶち当たった。「安全保障としての食料自給率の向上を! 速効性のある具体策を自民党に問いたい」とある。サワリを引用しよう。

(工藤 稔)

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