もう一カ月ほど前の話だが、岸田文雄内閣に過去最多タイの女性五人が入閣したというニュースの中で、岸田首相が「女性ならではの感性や共感力を十分発揮していただきながら、仕事をしていただくことを期待したい」と語った発言が批判を浴びた。SNSなどで「男性ならではの感性って言う?」「昭和か」「ダサすぎて泣けてくる」との声が上がったという。

 首相のこの発言、ひと昔前なら、普通の、ありふれた表現として聞き流されたことだろう。完全に昭和世代の、ダサいアナログオヤジの私も、この発言の何が批判を浴びるのか、どうしてネット上で炎上するのか、ちょっと理解できるような気もするが、本当のところよく分からない。
 私の周りの昭和世代のオッサンの多くも、私と似たような感覚をお持ちだろうと推量する。「ジェンダー」なる言葉を理解するための参考として朝日デジタルの「コメントプラス」の記事を紹介しよう。

 ――この日の夜、TBSの報道番組「ニュース23」で、メインキャスターを務める小川彩佳アナウンサーは「国のトップの認識としては、なかなかの失言だったんじゃないかなという気もする」と批判した。

 ――「典型的なジェンダーバイアス内面化おじさんの発想」「感性よりも論理的思考力に、共感力より決断力や指導力に優れた女性もいるはず」。社会学者の水無田気流(みなしたきりう)さんはX(旧ツイッター)にそう投稿した。

 水無田さんは朝日新聞の取材に「男性には『男性ならでは』と言わないのに、女性だと属性が先立つ。彼女のここが素晴らしいと言わずに属性で語るのは、実力を評価したのではなく、女性としてゲタを履かせたと言っているに等しい」と指摘し、「褒めたつもりで炎上しているのが致命的。なぜ批判されているのか、理解できないのではないか。この政権でジェンダー平等は進まないと、絶望的な気持ちになった」と言う。

 ――ジェンダー問題に詳しい三浦まり・上智大教授(政治学)は、首相の発言に疑問の声が広がったことについて、「社会全体のジェンダー意識が高まってきた証し」とみる。

 そのうえで「首相の発言にみられる『女性は共感力が高い』という思い込みは、女性にケアやサポートする役割を背負わせる旧来的な社会規範から生まれている。女性はこうだと決め付けている点に大きな問題がある」と解説。「能力よりも女性であることを評価するような発言は、女性閣僚に対して大変失礼だ。男性閣僚には使わない表現で、男女の不均衡な権力関係の中で出てきた言葉だ」と語った。(引用終わり・後略)

 おそらく、私も社内を始めあちこちで“ジェンダーバイアスおじさん”的な発言を繰り返しているのだと思う。

(工藤 稔)

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