会社の机の周りの片付けをしていて、何年も前に読もうと考えて積んであった何冊かの本を見つけた。大半は、いまは興味の外だったが、ほこりをはたいて自宅に持ち帰った中に司馬遼太郎の『竜馬がゆく』があった。司馬に凝って乱読した時期に、今は亡き読書家の先輩からいただいた単行本サイズの五巻もの。一九六三年初版の本だから、活字が小さいため敬遠したような記憶が薄っすらある。睡眠剤として役に立ちそうだと、枕元において数日前から少しずつ読み始めた。そんなこともあって、「明治」という見出しの活字が目に止まったのだった。

 「『明治の日』という政治運動」――。今月二日付毎日新聞の特集ワイド面の右肩にレイアウトされた、コラム『今日も惑いて日が暮れる』。筆者は東京学芸部の吉井理記記者。ネットで検索してみると、首都圏などでは前日の夕刊に掲載されたものらしい。コラムのキャッチフレーズに「上からではなく下から目線で、不安と惑いをつづった紙つぶてを投げてみたい――」とある。コラムの書き出しはこうだ。

 ――奇妙な政治運動が続いている。

 祝日法を改め、11月3日の「文化の日」を「明治の日」にしようというのだ。2011年設立の民間団体「明治の日推進協議会」がその中心である。昨春には超党派の議員連盟もできた。

 記事によれば、明治期は欧米列強に圧力をかけられながらも先人たちが日本の独立を守り、近代化を進め、国の礎を築いた。こうした明治期の歴史的意義を踏まえ、自民党有志らが明治改元から百五十年となる二〇一八年に「明治の日」創設に向けた議連を設立。二〇二二年、超党派に拡大したという。
 この会に集う顔ぶれを見ると、会長の田久保忠衛・杏林大学名誉教授は右派団体「日本会議」の会長。役員に名を連ねる大原康男・国学院大学名誉教授、伊藤哲夫・日本政策研究センター代表、百地章・国士舘大学特任教授、小堀桂一郎・東京大学名誉教授らもやはり日本会議の要人。右派言論人・櫻井よしこ氏の名もある。

 吉井記者は、次のように書く。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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