オジサンは、筆不精だ。この仕事に就いた一九八八年当時、記事は手書きだった。原稿用紙(二百字詰め)にボールペンなり、鉛筆で書いた。その新聞社が業績不振で廃刊になる二年ほど前、ワープロなる機械で書くよう指示された。「そんなもの使えるかー」と反発したが、使ってみると便利だった。原稿用紙をハサミで切ったり貼ったりしなくても、指先一つで、書き換えが自在。職場から写植のスタッフが消えたのは間もなくだった。あれから四十年、いまじゃあ、パソコンで記事を書いている。筆不精は変わらないけれど。

 情報の世界で仕事をしているくせに、パソコンのインターネット機能を使って飛行機や宿の予約をするのが苦手だ。買い物も、ダメ。挑戦するのだが、ほとんど途中で放り投げるハメになる。「クラウドファンディング」なるものも、友人の依頼で一度、やってみたのだが、結局、本人に現金を手渡すことになった。

 で、話の本題は、そのクラウドファンディングだ。この言葉は、「群衆」と「資金調達」を組み合わせた造語。多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する。略して「クラファン」とも言う。

 小欄で何度か話題にしているが、第五十五回小熊秀雄賞を受賞したアイルランド在住の津川エリコさんの詩集『雨の合間 Lull in the Rain』の再出版に、地元旭川の出版社、ミツイパブリッシングが取り組み始めた。今は絶版になっている『雨の合間』を全国の書店に流通しやすい新版として生まれ変わらせようというプロジェクトだ。

 ミツイパブリッシングの編集者、中野葉子さんは「国境を越えて伝わる詩」と題する趣意文の中で次のように書く。

 ――(前略)アイルランドに三十年暮らし、日本ではほぼ知られていない詩人による、日英二言語で書かれた詩集の受賞でした。小熊秀雄賞は五十五年の歴史をもち、すぐれた現代詩集に贈られます。最終選考委員の一人アーサー・ビナードさんも激賞した『雨の合間 Lull in the Rain』ですが、オンデマンドの自費出版だったため、入手経路が限られていました。(二〇二三年十一月二十五日現在は絶版)

 小熊秀雄賞の最終選考会は毎年、会員限定公開で行われます。その場でアーサー・ビナードさんはいつも、「ふだん詩を読まない人にも『この詩集いいよ!』と勧めることができる」という点を、小熊秀雄賞に推すときに重視していると言います。

 『雨の合間 Lull in the Rain』も、難解な言葉は一切使わず、シンプルな言葉づかいで、国境を越えて伝わる詩が書けることを示す詩集です。

 小熊秀雄賞に輝いた『雨の合間 Lull in the Rain』を、日本の書店で気軽に注文できる詩集として、再出版したい。

 日本を離れ、アイルランドのダブリンに暮らしながらひとりコツコツと詩を書きつづけてきた詩人・津川エリコの紡ぐ言葉を、日本の読者に伝えたい。そのような思いから、本プロジェクトを立ち上げました。(引用終わり)

 目標金額は百十万円。十二月十五日現在、三十九万五千円が寄せられている。目標達成にかかわらず、二月二十九日までに集まった金額がファンディングされる。残り七十余日か…。

 さて、話題を変えて、市議会の話。十三日付北海道新聞旭川版の「市議発言の適切性 議運委で再度協議」と見出しを打ったベタ記事。以下、本文。
 ――旭川市議会の議会運営委員会は12日、高橋英俊氏(自民党・市民会議)が11日の一般質問で、野村パターソン和孝氏と上野和幸氏(いずれも無党派G)に向けて使用した文言の適切性について、継続的に協議する方針を示した。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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