3ノ8・TEL29-2022

 毎日食べてもいいぐらい、天ぷらが大好き。特に山菜シーズンには、わが家でもしょっちゅう作り、健康に気を使うカミさんからクレームが入るほど。でも、専門店の味には到底及ばない。天ぷらぐらい、プロと素人の差が出る料理はあまりないのではないか。この店の天ぷらを味わって、あらためてその思いにかられた。家庭の天ぷらとは天と地の違いの上品さ、おいしさなのだ。

 旭川では数少ない天ぷらの専門店として、三月に開店したばかり。店主の鷲見篤史さん(40)は、調理学校を卒業後、老舗和食店の花まる亭に入り、同店一筋で約十五年間腕を磨いてきた。しかし、同店が閉店することになり、料理長だった鷲見さんが独立する形で引き継いだ。

 花まる亭の味を引き継ぎ、カボチャ団子のペロンタン汁など名物料理も残したものの、鷲見さんがメインにしたのは天ぷら。「最も奥が深く、最も食材の魅力を引き出すことのできる調理法だから」と鷲見さん。天ぷらにかける情熱は半端ではない。日本全国から選りすぐりの天ぷらなどの食材を集めるだけでなく、卵は餌や飼育環境にこだわった地場産、粉は道産と九州産を合わせ、天候によって衣の溶き方や空気の含ませ方を変える。油は太白胡麻油をベースに選び抜いた二種の油をブレンドし、これもその日の天候や気温によって配合を変える、水は自ら汲みに行く東川の湧水…といった具合。

 そんなこだわりが詰まった、コースの一品であるかき揚げをいただいた。旭川ではあまり見たことがない静岡県産の生の桜エビをぜいたくに使い、三つ葉と揚げたもの。口の中でほろほろと溶ける衣のとんでもない軽さ、濃厚な桜エビの旨味。まさに絶品で、こんなかき揚げが世の中にはあるのだ、とうなってしまった。

 メニューは、天ぷらを中心とした五千五百円~、七千七百円~、一万千円~、の三種のコース料理のみ。鷲見さんが目の前で揚げてくれるカウンター席はわずか四席というぜいたくさ(七千七百円以上のコースのみ)。完全予約制で、予約は電話でのみ受け付けている。定休日は日曜日。営業時間は午後五時~十時。(フリーライター吉木俊司)

ケロコメモ
 花まる亭が閉店した後にオープンしたお店。完全予約制なので、ちょっと敷居が高かったけれど、気になったので行ってきた。

 まず、雰囲気が良い。奥様が美人で感じが良くて素敵。メニューはコースのみで、お洒落なお通しやお刺身の後に、ペロンタン汁が出てきた。この汁は、もう食べられないと思っていたので、うれしかった。店主は花まる亭の料理長だったから、そのままの味。

 その後の天ぷらもすごかった。ヤングコーンやいちじくなどもあった。また行かなきゃね。

2022年06月30日号掲載