市長選の真っ只中だが、いや、だからこそ、あえて言っておかなければならない。

 二期目を目指して出馬した現職の西川将人候補が、北彩都地区にタワーを建設すると言い出した。選挙公約には、「多くの市民や観光客が訪れる魅力あふれる旭川を代表するシンボル施設を北彩都に設置し」とある。十月二十五日、北海道新聞旭川支社主催の公開討論会で、「夜景を見られるタワーを整備し、旭山動物園のような魅力ある観光地域にしていきたい」と具体的に踏み込んだ。

 察するに、札幌・大通公園のテレビ塔(高さ百四十七・二メートル)や東京スカイツリー(六百四十三メートル)、はたまた五稜郭タワー(九十八メートル)の“人寄せパンダぶり”にあやかろうということだろう。だが、考えていただきたい。札幌のテレビ塔も東京スカイツリーも、電波塔という本来の役割があり、展望はいわば「おまけ」なのだ。五稜郭タワーにしても、展望台に登ることで、地上では想像するしかない五稜郭の星型をこの目で確認できるという、明確な目的がある。しかも民営だ。首長選挙で最も強いと言われる二期目の選挙。西川候補は「建設費は高さ百メートルで約二十億円。まちづくり交付金による国の補助を半分近く受けられる可能性があるので活用する」と述べ、財源にまで言及している。

 唐突に選挙公約として現れた、このタワー構想が独り歩きされてはたまらない。新しいJR旭川駅は、「自然豊かな河川空間を間近に望むことが出来る、国内でも稀な駅舎」がうたい文句だった。市は繰り返し「駅の傍で豊かな自然や景色を楽しめ…」「自然豊かな川の風景や眺望を楽しめる…」と説明してきたはずである。工事が進められる途中で、豊かだった河畔林が無残に伐採され、わずかに残された広葉樹と移植された幼木という姿になってしまったが、それでも、十年後、二十年後には、移植されたり、新たに植えられた幼木も成長するだろう。市が説明してきた、作りモノではない本物の自然が三十五万都市の駅のすぐ裏にある、生命の循環を主張する旭山動物園を持つまち・旭川らしい公園に近づく可能性もある――。

(工藤 稔)

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