「イオンは、ものすごい人だったよ」と、元日にイオンに出かけた友人が言う。「オレもそうだけど、みんなすることがないんだな、きっと」と。「元旦にお金を遣ったら、一年中お金が出ていくからダメだと、子どものころ、親に叱られたものだけど」と応じながら、「冗談ではなく、元日は、セブンイレブンもセイコーマートも、ローソンも、もちろんイオンも、営業を禁止する法律を作るべきじゃないか。庶民に、自由と無規律・野放図を勘違いさせた結果が、この日本の、あらゆる面で、だらしない結果を生んでいるんじゃないの」と、屠蘇の酔いも手伝って、毒舌を吐いてしまった。私は、本気でそう思っている。

 毎年末、しめ飾りを買わせていただいている造園業の社長の話によると、販売しているしめ飾りやしめ縄の八割は、中国で製造されたものだという。三十年以上前、従業員を通年雇用するための仕事として、しめ縄づくりを始めたのだそうだ。冬場に仕事がなくなる雪国ならではの発想だった。「いま、輪〆の材料のスゲが国内では調達できない。採って乾かす人がいないから。コンバインを使うから稲わらもない。だいたい、縄を編む人が、いなくなった。コストと手間を考えたら、中国産を扱うしかない。時代は変わるんだよね。神社のお札も中国で作っているんだからさ」。いろんな意味でありがたい話である。ため息が出るほど。

 明けて、十月で六十歳になる。もともと記憶力に自信があるほうではないのだが、最近とみに物忘れが著しい。加えて、恩知らずの私は、恩を忘れる。ちなみに、この新聞社が立ち上がった時に、大きな力になってくれた方のご恩もいつしか忘れてしまうのだろうと考え、出来るだけその方のご商売のシンボルを服装の一部に着けることで、戒めとして自らに突き付けて十八年になる。

 この間、愛読者の皆様も含めて、数え切れない方たちに支えられてきた。そうした数多の恩人に「いつかは恩返しを」と念じつつ、会社は十八年、そして私は還暦である。あと何年、この仕事を続けられるか、恩を受けた方々にどのような報い方ができるか、そんなことをグジグジと思い巡らせながら、年末年始を過ごした。結論の兆しのようなものは浮かばす、ただただお神酒の量が増えただけだったが。

(工藤 稔)

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