除雪が必要なほどの積雪があった朝、家人が「今年の人は、すごく丁寧よね」と言う。自宅は、市道が堤防にぶつかり、大きくカーブする場所にある。除雪車は、付近の道路の雪をかき集め、自宅前の堤防敷地に積み上げる。年によって、この地域を担当する委託業者やオペレーターが変わるのだろう、今冬のように、まことに丁寧に、住民の便宜を考慮しているのが明らかに分かる年と、昨冬のように、まったく手抜き、いい加減な作業の結果に恨み言を吐きたくなる年がある。後始末をする側にすれば、月とスッポン、天道さんと番当さん、金柑と軍艦くらいの落差である。

 積み上げられた雪山の横に、町内会が設置しているゴミ収集のための檻があって、その周囲の雪もきれいに除けられている。有難く思いつつ、つい、このオペレーターさんは、こんなに丁寧な仕事をして、他のオペレーターよりも時間を費やしているのではないか、と心配になった。そのことで会社の中で不利な立場になってはいないか、経営者や責任者にいやみの一つも言われてはいないだろうか、と。いやいや、このようにきれいな仕事をする人だから、手際もよく、それほどの時間を要しない技術を持っているのだろう、大丈夫さ、などと思い返したりする。スピードや効率や上辺の要領の良さだけが重宝される世知辛い世の中、律儀な除雪の後の風景に、まだまだ捨てたものじゃないわな、と何やらホッとさせられた。久しぶりの枕はここまで。

 一昨年八月の総選挙で、「税金のムダ遣いを徹底的に洗いなおす」「官僚の官僚のための政治を変える」をマニフェストの根幹に掲げて政権交代を成し遂げた民主党は、もしかすると、選挙民が愛想をつかした旧政権・自民党よりも、よほど程度が悪いのかも知れない。

 政権奪取の直後、新政権はマニフェストにある通り、全国の大型ダム計画とともに、下川町で進められているサンルダムの建設工事を一時凍結した。サンル川は、天塩川の支流・名寄川の枝川で、「ヤマベの湧く川」の異名をとる。河口から約百七十キロの距離をヤマベの親・サクラマスが遡上し産卵する、国内でも稀な本物の自然が残された川である。国の絶滅危惧種に指定されているカワシンジュガイも生息し、詳細は省くがその貝の繁殖にはヤマベが不可欠な役割を果たしているのだそうだ。生物の摩訶不思議な世界を身近なサンル川で見ることができる。

(工藤 稔)

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