「これって、緑道じゃない。灰色道って名前を変えるべきじゃないの」――。彼女は怒りを隠さない。仕事を終えて、仕事に出かける前、家事に疲れたとき、あるいはボーッとしたいとき、七条緑道沿いの喫茶店で、窓からの風景を楽しみながら、ちょっとミルクを垂らしたコーヒーを飲むのが楽しみだった。

 「去年の十月だったと思う、バタバタと剪定したのよ。今は、少し葉が出て来て、どうにか生きている木に見えるけど、五月くらいまでは、地面に丸太を立てたみたいだった。辛そうで、寒そうで、本当に、涙が出たわ」

 七条緑道は、買物公園とほぼ同時期、五十嵐広三市政の一九七〇年代に整備された。買物公園同様に歩行者専用道にする計画もあったが、曲折の末、中央部分が歩道、その両側を車道とする形になった。四十年が経過して、歩道は両側のハルニレやポプラ、ナナカマドの葉に覆われて、「緑道」の名を体現する旭川を象徴する原風景の一つになっている。

 その改修工事は、昨年十一月に常磐公園に近い五丁目側から始まった。二〇一〇年に策定された、買物公園から常磐公園に到る文化芸術ゾーン整備方針による改修だ。

 七条緑道は、旭川市が二〇〇八年にバリアフリーの生活道路とした。今回の工事で、段差をなくし、買物公園の路面と統一感をもたすために透水性のある白や灰色のブロックに張り替える。道路中央に黄色の点字ブロックが新設されるため、緑道中央部にあった「人間像・青年」(加藤顕清・作)など五体のブロンズ彫刻は左右どちらかに移動させられる。

 また、ベンチはすべて撤去され、通路と、街路樹が生育する芝生の部分を仕切る植樹枡の天板がベンチ兼用となった。五丁目から八丁目までの区画それぞれに一つずつ配されていた藤棚も、従来のものは全て廃棄されて作り変えられる。

 五丁目区画はすでに完成し、工事は現在六丁目の区画でおこなわれている。完成した新しい道を歩いてみると、なんだか両側のマンションや住宅と完全に隔絶されている気分になる。改修前の車道や道沿いの建物との一体感は完全になくなった。周囲を眺める気分もあらばこそ、「早くこの通路から出たい」と急ぎ足になったりして。

(工藤 稔)

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