昨年末の選挙で、「TPP(環太平洋経済連携協定)への参加」を主張する民主党は、「聖域なき関税撤廃には反対」を掲げる自民党に大敗した。我が北海道もそうだが、TPPに対する対応の違いが、農業を基幹産業とする地域での自民党圧勝の一つの要因になったと考えていいだろう。

 ところが、選挙の期間中も終わった後も、TPPの話題はマスコミの報道になかなか登場しない。衆院選挙の直前、十二月三日から十二日まで、協議参加国の一つ、ニュージーランドのオークランドで十五回目の協議が行われたらしいが、私が知る限り、何カ国が参加して、どのような話し合いが行われたのか、報道は一切なかった。

 それは、政権の座に復帰した自民党の党内や閣内に、TPP交渉参加について賛成派と反対派が混在していて、今夏の参院選までは方向性を打ち出せない状況にあるからだろう。そして、もう一つの理由は、この交渉が徹底した秘密主義だということだ。参加国の国会議員でさえ、協議の内容について分からないという。しかも、交渉が妥結し、協定が発効してから四年間は、交渉の過程を記録した文書は公開されない、との約束がある、とされるが、これも真実かどうか分からない。交渉のルールさえも公表されないのだから。

 少し前になるが、昨年十月、JAひがしかわが主催した「TPPを考える上映会」で、「モンサントの不自然な食べ物」という映画を観た。フランス人ジャーナリストで、ドキュメンタリー映像作家、マリー=モニク・ロバンの制作。アメリカに本社を置く多国籍企業、モンサント社の実態を暴きだすドキュメンタリーだった。世界の遺伝子組み換え作物市場の九〇%を独占するモンサント社は、ベトナム戦争で使われた枯葉剤のメーカーだった。同社が世界で売るのは、遺伝子組み換え作物のタネ、そして除草剤、農薬、牛の成長ホルモンなどだ。不自然な食べ物=遺伝子組み換え作物が、アメリカばかりではなく、メキシコ、インド、パラグアイ、イギリスなど、どれほどの国の農業を根こそぎ破壊していることか、鳥肌が立つ映像の連続だった。

(工藤 稔)

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