私自身は、それほど拘(こだわ)っているわけではないのだが、年明け、かなりの方から、「乾杯条例」について質問されたり、意見を求められたりした。大人数が集まる新年会が開かれたりするから、そのせいもあるのだろう。

 その一つ、北海道新聞グループの新年交礼会が七日正午から、市内のホテルで開かれた。約二百五十人が出席した宴では、西川将人市長が乾杯の音頭を取った。市長が手にしていたのは、ビールのコップ。各テーブルに日本酒も、地元産の焼酎の用意もなく、参加者の多くは仕事の途中抜けて来て、昼飯を兼ねて出席するという風情だったから、ウーロン茶で「カンパーイ」が大半だった。

 「お前は、いつからクレーマーになったのだ」との声が聞こえてきそうではあるが書く。三十五万都市、旭川の市長ともあろう者が、市議会で七人が反対し、五人の退席者まで出して、多数決で可決せしめた「旭川市地酒の普及に関する条例」に、多くの市民の面前で違反するとはけしからんではないの。(笑い声が聞こえる気がするが無視して続ける)

 昨年十二月十八日に公布・施行された条例の第三条には、「市は、地酒による乾杯の奨励その他の地酒の普及の促進に必要な措置を講ずるよう努めるものとする」とある。第二条に「地酒とは、市内において製造された清酒その他の酒類をいう」とあるから、西川市長が手にしていたコップに、大雪地ビールのケラ・ピルカなんかが注がれていたのならば、条例違反には当たらない。だが、当日の会場に地ビールは見当たらず、あれは間違いなく、国内四大メーカーの製品だった。

 条例違反の責任は、宴を主催した北海道新聞グループにまで及ぶ。北海道新聞の高田正基旭川支社長に電話で話を聞くと、「条例のことは知っていたけど、うちの新年交礼会で地酒で乾杯云々については、全く念頭になかったなぁ。ハッハッハ」と大笑された。郷土北海道を代表する、日本に冠たる地方紙の雄の旭川支社が、その地元のまちの条例に違反する行為に及ぶとは何事ぞ。これって、もしかして全国ニュースの価値があるんではないの、ねえ、共同通信さんや時事通信さん。(またまた笑い声が聞こえるような…)

(工藤 稔)

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