前号の小欄、「身近に迫る新型コロナウイルスとワクチンの副反応について」には、四人の読者から丁寧なメールをいただいた。いずれも、先が見えないコロナ禍の行方と「ワクチン接種」について、思い悩んでいる様子がうかがえる内容だった。その話は、あとで。

 さて、「身近に迫る」が現実になった話を少々。十七日夕、私は三・六街の飲食店にいた。月に一度、異業種のメンバーが集まり、軽く飲んで食事をする会。業界の話やら、個人的な近況やら、昔話やら、まあ他愛ない話題が主なのだが、畏敬する人生の先輩の蘊蓄(うんちく)に耳を傾ける、貴重な機会でもある。ただ、「不要不急じゃないか」と言われれば、反論はできないが…。

 九十六歳の母親は昨年五月、「母さん、味が分からなくなった」と言って、四十年以上続けた独り暮らしをあきらめ、ようやく市内のグループハウスに入居した。自家調理の三度の食事、介助付きの入浴、そして週二回出かけるデイサービスのお陰で、独り暮らしのときよりも健康的になった。その母親が、コロナに感染した。熱が出て、咳とくしゃみの症状があるという。三・六の飲食店にいる私に家人から連絡が入った。

 母親に最後に会ったのは、十一日朝。届けるものがあって、家人と二人で母親の部屋に十五分もいたろうか。保健所の女性職員から自宅に電話があり、濃厚接触者だと告げられ、十八日に検査を受けるよう勧められた。「待機期間の一週間は明日で終わり、自覚症状もないそうだが、念のため検査を受けたほうが安心じゃないですか?」と、まことに丁寧、感じの良い対応であったそうな。家人は、「あんな時間に、保健所の方たち大変ねえ。頭が下がるわ」と大層ほめた。

 翌日午前中に市立病院の駐車場で、唾液を提出。夕方、保健所から「陰性でした」と連絡がきた。グループハウスのスタッフによれば、母親は三十八度の熱があるが、食事はとっているという。母親の携帯に電話をすると、「部屋に運んでくれて、これからご飯。熱? もう大丈夫だよ」と、声に少し力がないが気丈に話す。どんなときにも食欲は落ちない。さすがは食いしん坊の私の母である。

 もし検査で私が陽性だったら、社内の何人かは濃厚接触者として自宅待機を強いられたかも知れない。前夜の会合のテーブルは、十分にソーシャルディスタンスを確保した配置だったが、私の向かいで鍋をつついた二人は、濃厚接触者になった可能性が高い。二次会のスナックは短時間だったが、少し席が詰まっていたような…。

 記者歴の長い社員と話をした。外に出て人と会うのが仕事だ。できるだけ電話やメールを使おうとしても、どうしても表情や態度や物腰を見つつ取材をしたい。長年の習慣は、もはや“属性”と言ってもよいレベルだ。そして言う。「これまで感染したり、濃厚接触者にならなかったのが幸運だったということですよ」。

 届いたメールの一通を紹介する。小欄で取り上げることに了解をいただくメールに、次のように返信してくれた。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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