「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で、駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」――二〇一九年九月、ロシア・ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで安倍晋三首相(当時)がプーチン大統領に対して行った“甘い呼び掛け”の一部である。読んでいるだけで顔が赤くなる。あぁ恥ずかしい。

 この恥知らずな男は、首相時代にロシアを十一回も訪問し、プーチン大統領と二十七回の会談を行った。揚げ句、プーチンに「いま思いついた。平和条約を前提条件なしで結ぼう。今ここでとは言わない。今年末までに結ぼうではないか」なんておちょくられて、外交的成果は何一つ獲得できず、逆に共同経済活動に日本が三千億円を投入すると約束させられた。それどころか、北方四島が返還される可能性は限りなくゼロに近くなった。

 仮病を理由に政権を二度も放り投げたこの男はテレビの報道番組に出演し、今度はウクライナがロシアに侵攻されたのは核を放棄したからだという持論を語り、「日本も核シェアリングについて議論すべきだ」と主張したそうだ。核シェアリングとは、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ、トルコの五カ国に米国の核兵器を配備している体制。米ソの冷戦時代から行われている、「核抑止力」という幻想の賜物に他ならない。

 なんと嘘つき宰相らしい短絡的、火事場泥棒的な暴論・空論だろう。ロシア軍はウクライナ南部にある欧州最大級の原発に砲撃を加えたと伝えられる。核兵器が抑止力になるなんて考え方は、このこと一点をとっても幻想だと分かるではないか。核兵器よりも原発を持つことが、国民にとって、いや人類にとって、大きなリスクだということが、ロシア・プーチンの狂気によって暴露されたのだ。

 日本は、仮想敵国に据えている北朝鮮や中国、そしてロシアに近い日本海側にたくさんの原発を持っている。軍事的脅威を煽って、敵基地攻撃や核を持つ議論をする前に、あの“原発銀座”を何とかする方が先ではないか。発射するたびに政府が大騒ぎする、テポドンだか、北極星3号だかを一発打ち込まれたら、この小さな島国はひとたまりもないんだぜ。もうすぐ十一年目の三・一一がやって来る。枕はここまで。

 前号の小欄「だから新聞はおもしろい。1面『特別職人事案、報道が先行』の補足のような」に読者から意見のメールが届いた。時々メールをくれる男性。貴重な声だ。紹介しよう。

 ――今日も「直言」を読み終えてから八時間近くたったのですが、どうも理解しがたいモヤモヤ感が残ったまま。一番は最後の段落、「一般市民にとって、副市長の人事などほとんど関心の外だ。だいたい現副市長の名前も知らない市民が圧倒的だ。ましてや部長の人事など、はっきり言ってどうでも良い事だろう。…」。いやいや図星だ。旭川市民の市政への無関心ぶりを見事にいい当てている。と賛辞を贈りたいところだが、残念ながらそうはいかない。

 いくら編集長が道新記事を批判しようとしても、市民の事をこんな風に書いて巻き添えにするような行為は許せん。仮に、市政に関する市民意識調査でも実施して、その通りの無関心ぶりだとしても、新聞記事に編集長の憶測・推測でこの記述はダメでしょう。『だから新聞は情けない』と見出しを変えて謝罪すべきでしょう。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。