行きつけの魚屋の主人が怒っている。こんな話だ。

 ――乞食みたいなことは言いたくないけどさ、ちょっとは考えてくれてもいいんじゃないか? 飲食店は売上げによって、一日二万五千円だか三万円だか、協力金をもらえるんだろう? そこに納めているオレたちみたいな業者は、どうなんだ? 居酒屋や寿司屋は軒並み休業、開いている店も午後九時には閉店するから、仕入れは控える。うちの売上げは、コロナの前の三割だ。おっかと二人だから、なんとか飯を食えてるけど、グチの一つも言いたくなるよ。


 魚屋だけでなく、肉屋も八百屋も酒屋も、あらゆる食に関わる業者、業界は死活問題レベルの影響を受けている。バカの一つ覚えのように、飲食店に協力金を支給する対策が、新型コロナ感染拡大にどれほどの効果をもたらしているのか、いないのか、その検証データなど見たこともない。ただの気休め、やってる感の演出とも映る。

 ヨーロッパの国々では、生活の制限やマスク着用の義務などが次々に撤廃されつつあるという。小紙二月二十二日号掲載の大久保ゆかりさんのコラム「スイスからの手紙」で知った。

 思うに、責任の所在が明確なのだと思う。仮に制限を緩和したことで再び感染が拡大に転じたら、その責任を取る部署、あるいは役職がはっきりしている、逃げないのだろう。心やさしい、美しき我が日本は、誰も責任を取らない、負わせない、いつも曖昧模糊。だから対策も泥縄式になる。

 夏の参院選の前に、かわいそうな年金受給者に五千円の“しみったれワイロ”をばら撒いて、選挙が終わったら最後、二度と協力金など出すものか。逆に散々ばら撒いた協力金や給付金の回収が始まる。怒りを忘れた国民は、またぞろ「ほかの政権よりまし」との理由で、政権与党に清き一票を投じるのだろうよ。枕はここまで。

 十六日付北海道新聞夕刊を手に、弊社の女性スタッフが「私の周りに、賛成する人なんて、ただの一人もいないんだけど」と怒る。手にしている夕刊の一面トップの見出しは「五輪招致 賛成意見52%」「札幌市民対象の郵送調査」。以下、リードを。

 ――二〇三〇年冬季五輪・パラリンピック招致を目指す札幌市の秋元克広市長は十六日、市民と道民に招致の賛否を聞いた意向調査で、「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた賛成意見が札幌市民対象の郵送調査で五二%になったと発表した。賛成意見は全道対象のインターネット調査では五七%、道内七地区で行った街頭調査は六五%でいずれも過半数に達した。(引用終わり)
 記事によれば、調査は、十八歳以上の札幌市民を対象にした「郵送」、市民二千人、市外三千人の計五千人を対象にした「インターネット」、札幌、函館、旭川、釧路、帯広、北見、苫小牧の七地区の約二千五百人を想定した「街頭」の三種類で行ったという。

 翌十七日付朝日の記事は、調査の詳しい数字を表にしている。「郵送」では、「賛成二六%」「どちらかといえば賛成二六%」、「反対二二%」「どちらかといえば反対一七%」「わからない九%」だそうな。

 記事は、秋元市長は「大会招致に向けて一定の支持を得られた」として、「次のステップに進むために関係団体への一層の協力をお願いしていく」と前のめりの姿勢を報じている。

 あのね、この調査、「賛成」か「反対」の二択だったら、どんな数字だったのかね。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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