読者から反響があるというのは、それが批判の声であれ、発行している者として喜ばしいことだ。社員やスタッフの論議のきっかけになる場合もある。今回のご意見も、校正のあり方など、紙面づくりに役立てなければと心している。届いたメールを紹介しよう。メールの主は五十歳の農業者だ。

 ――美瑛町の竹内憲一といいます。八月三十日の記事について意見を申し上げます。

 十六ページの『ケロコとラッコのおいしい話』の中で、「道産小麦のパンって本当に美味しいのだろうか、安全なのだろうかという疑問もわく」との記載があります。美味しいかどうか、というのは主観の問題なので、そこは問いません。しかし、道産小麦を「安全なのだろうかという疑問もわく」という点について、どのような根拠で書いているのでしょうか? この記事を読んだ読者の中には「道産小麦は安全でないかもしれない」と思い、道産小麦のパンを敬遠する人もでてくるのではないかと思いました。

 私自身、農業に携わっており、日本の残留農薬基準や農薬の認可基準がEUほど厳しくないのは承知しています。また、日本という風土の特徴から、農薬使用回数がEU諸国よりも多くなることも承知しています。しかし、それだからと言って、道産小麦が安全でない、ということになるでしょうか? 日本の農薬使用基準は、仮に希釈倍率を誤って十倍に濃くしてしまっても人体に有害でないレベルで設定されています。そうした事実はご存じなのでしょうか? また、農薬取締法で定められた使用方法、使用基準等を農家は厳密に守っています。そうした法律の内容はご存じでしょうか?

 美瑛町では町を挙げて、美瑛小麦の推進キャンペーンを行っています。こうした憶測(?)記事を出すことは、関係者の多大な努力に水を差す行為であり、残念でなりません。

 外部ライターの記事と思われますが、新聞社として、このような意見に対してどのような見解をお持ちでしょうか?

 竹内さんが推測した通り記事の筆者「ラッコよしき」さんは、フリーランスの記者。全国紙の元記者だ。彼の「見解」を。

 ――舌足らずの原稿でした。不快な思いをさせたことに対し、心から謝罪したいと思います。

 道産小麦は、農薬基準などに甘い米国やカナダ産に比べて、安全性はかなり高いと思っています。だからこそ、私も数十年前からできる限り道産小麦の製品を買うようにし、この連載『美味しい話』でも道産小麦を使っている店を高く評価してきました。

 しかし、その一方で竹内さんも書いておられるように、日本の残留農薬基準や農薬の認可基準などはEUほど厳しくありません。近年は、米国の圧力で基準や表示義務などがさらに緩和されようとしています。また、北海道はクリーン農業というイメージがありますが、農薬の使用量は本州にも負けないという話も聞きます。

 竹内さんがおっしゃられる通り、農家の方々は農薬の使用方法や使用基準を厳密に守っていられることは重々承知しています。ただ、私も含めて消費者、特に子育て中のお母さんなどの中には、何とかEU並みの厳しい基準で育てた道産小麦を食べられないだろうかと願っている人がいることも、分かっていただきたいと思うのです。

 いずれにしましても「安全なのだろうかという疑問もわく」という表現は、不適切であり、改めてお詫び申し上げます。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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