拙宅は石狩川の堤防脇にある。春光地区の自衛隊駐屯地から飛び立ったヘリコプターの通り道らしい。十日ほど前、五、六機の編隊が飛行した。一機、二機の飛行はいつものことだが、こんな群れは珍しい。その「ドコドコドコドコ」という低い爆音に、家人が「オスプレイじゃない?」とベランダに出て空を見上げたが、違った。日米共同の軍事訓練が近付いたからなのか、白い真っすぐな飛行機雲を引いて戦闘機らしきモノが頻繁に滑空したり、ヘリコプターの編隊が住宅地の空を飛び回ったり、北海道を含む日本全部が、〝沖縄化〟する前兆かと思えたりする。

 報道によると、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)に所属する新型輸送機オスプレイ一機が、陸上自衛隊と米海兵隊の共同訓練に参加するため十八日、恵庭市の北海道大演習場に飛来した。オスプレイの訓練は、上富良野演習場(上富良野町、中富良野町、富良野市)でも行われ、最大六機が十九日以降に飛来する予定だという。夜間の訓練も予定されているらしいが、米海兵隊の幹部は「(実施日などの)詳細は明かせない」と述べている。訓練の目的は、沖縄の負担を軽減するためなんだと。

 昨年十二月に名護市辺野古の海岸に墜落、大破。乗員五人のうち二人負傷。同じ日、別のオスプレイが普天間基地に胴体着陸。今年一月、中東イエメンで激しい衝撃を伴う着陸。三人が負傷。そして今月五日、オーストラリアで軍事演習中の普天間基地所属オスプレイが墜落。三人が死亡。「未亡人製造機」という批判に、米軍は「機械的、構造的欠陥はない」とパイロットの操縦ミスが原因だと強弁するが、飛行機ってこんなに落ちる乗り物なのかと思いません? 素朴に。

 我が高橋はるみ知事は、日米共同訓練について、「北朝鮮問題をはじめ、我が国の安全保障環境が厳しさを増している中、地域の安定化のため、極めて重要だ」と安倍政権や防衛省の代弁者のような物言いで、「国の責任において、安全管理に万全を期してほしい」とまるで他人事。意訳すれば「泊原発の再稼働と同じで、知事の私には権限も、責任もありません。すべて国が決めてくださいませ。お上の忠実な下部である私は、決して逆らいませんから」となる。せめて、「飛行ルートや飛行する日時を主権者たる国民に明らかにせよ」と要求できないものか。

 米軍は、日本の領土、領空、領海を自由に動き回ることができる。日本国民はまるで搾取や圧政に甘んじる、米国の植民地の哀しき民のごとし、である。八月十七日付の朝日新聞が、同じ先の戦争の敗戦国、イタリアとドイツの米軍基地と、日本のそれを比較する記事を載せている。そのサワリを。

 ――(前略)国内に六つの主要米軍基地を抱えるイタリアは、基地の運用・管理に関する米国との二国間合意を結んでいる。

 国内の米軍基地の管理権はイタリアにあり、軍用機の発着数や時刻はイタリア軍司令官が責任を持つ。飛行訓練には国内法が適用され、重要な軍事行動にはイタリア政府の承認が必要とされる。(中略)

 冷戦時代、米軍の危険な超低空飛行訓練などが問題化。90年の東西ドイツ統一直後から、改定への取り組みが進んだ。

 2年の交渉を経て、基地外での訓練はドイツ当局の承認が必要となり、駐留軍の陸海水路の移動すべてにドイツの交通法規が適用されるように改定された。駐留軍機は騒音を規制する国内法にも縛られる。(後略・引用終わり)

(工藤 稔)

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